平成20年版 消防白書

4 消防用設備等

(1)消防同意の実態

消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。
消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。
平成19年度の全国における消防同意事務処理件数は、27万7,011件(前年度31万6,775件)で、そのうち不同意としたものは58件(前年度11件)であった(第1-1-28表)。 

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(2)防火対象物の実態

平成20年3月31日現在の全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第一(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150m2以上のもの及び(十七)項から(二十)項までに掲げる防火対象物の数)は383万4,706件である。
また、18大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は94万157件で、全国の防火対象物の24.5%を占めている。特に都市部に集中しているものは準地下街(全国の85.7%)、地下街(同81.3%)、性風俗特殊営業店舗等(同53.4%)などである(第1-1-29表)。

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(3)消防用設備等の設置の現況

消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所用の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。
全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみてみると、平成20年3月31日現在、スプリンクラー設備の設置率は99.6%、自動火災報知設備の設置率は96.8%となっている(第1-1-30表)。

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消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。最近では、平成19年1月に発生した兵庫県宝塚市カラオケボックス火災、平成19年6月に発生した東京都渋谷区温泉採取施設爆発火災を踏まえ、この種の小規模施設における防火安全対策を強化するため、自動火災報知設備やガス漏れ火災警報設備の設置対象の拡大、技術上の基準についての見直し等必要な改正を行っている。
一方、消防用設備等の設置義務違反等の消防法令違反対象物については消防法に基づく措置命令等の措置を積極的に講じ、迅速かつ効果的な違反処理を更に進めることとしている。 

(4)消防設備士及び消防設備点検資格者

消防用設備等は、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。
また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(総務大臣又は消防庁長官の登録を受けた法人が実施する一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。
さらに、消防法令において、消防用設備等の技術基準に性能規定を導入したことを受けて、平成16年3月及び5月に消防法施行規則の一部改正が行われ、特殊消防用設備等の工事又は整備を行うことができる特類の甲種消防設備士と、特殊消防用設備等の点検を行うことができる特種消防設備点検資格者の資格が新たに創設された。
これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るためには、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施している。
平成20年3月31日現在、消防設備士の数は延べ91万8,097人となっており(第1-1-31表)、また、消防設備点検資格者の数は特種(特殊消防用設備等)522人、第1種(機械系統)12万6,206人、第2種(電気系統)11万8,918人となっている。

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なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、各都道府県単位で自主的に実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行が図られている。

(5)防炎規制

ア 防炎物品の使用状況

建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効であることから、消防法により、高層建築物、地下街等の構造及び形態上防火に特に留意する必要のある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等の不特定多数の者やいわゆる災害時要援護者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。
平20年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、89万5,235件であり、適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものは86.4%、じゅうたんを全部使用しているものは84.2%、展示用合板を全部使用しているものは82.6%となっている(第1-1-32表)。

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イ 寝具類等の防炎品の普及啓発

家庭におけるカーテン、じゅうたんや消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類、自動車・オートバイカバー等についても、防炎化を推進することが火災予防上有効であることから、消防庁ホームページ(http://www.fdma.go.jp/)において、防炎品の普及のための動画を掲載するなど、その普及啓発を行っている。防炎対象物品以外の防炎性能を有するもの(防炎製品)については、財団法人日本防炎協会が自主的に採用する「防炎製品」表示ラベルの貼付によりその情報を提供し、消費者の利便が図られている(第1-1-33表)。

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(6)火を使用する設備・器具等に関する規制

火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備などその種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。
これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものであり、様々な面で国民の生活に役立つものとなっている。しかし、熱源、裸火等を有し、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、平成19年中の建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブで合計7,557件(建物火災件数3万1,248件の24.2%)発生している。
火気設備等の位置、構造、管理及び取扱いについては、消防法令で定められた基準に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制されている。

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