平成20年版 消防白書

2 災害別対策

(1)洪水

平成20年7月から9月にかけて全国各地で集中豪雨が発生し、特に「平成20年8月末豪雨」では、愛知県を中心に東海、関東、中国及び東北地方において中小河川の急激な水位上昇を伴う河川の氾らんなどによる被害が発生した。近年、このような時間雨量100mmを超えるような猛烈な雨が頻発し、被害の甚大化、ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態を引き起こすなど大きな被害が発生する例が増えている。
消防庁では、平成16年5月に施行された「特定都市河川浸水被害対策法」、平成17年5月に改正された「水防法」及び「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」等を踏まえ、地方公共団体に対し、地域における水害や土砂災害の防止対策を図るとともに、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。

(2)土砂災害

がけ崩れ、地すべり、土石流による土砂災害はこれまでに多く発生しており、近年では「平成18年7月豪雨」による長野県や鹿児島県など各地で発生した土砂災害により、多くの人的被害が生じている。土砂災害対策に関しては、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」、平成13年4月に施行された「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」及びこの法律に基づいて定められた「土砂災害防止対策基本指針」等に基づいて推進している。
平成19年4月には、市町村の警戒避難体制の整備を支援することを目的に、特に留意すべき事項として、情報の収集・伝達、避難勧告等の発令、避難所の開設・運営、災害時要援護者への支援、二次災害防止、防災意識の向上等の考え方を取りまとめた「土砂災害警戒避難ガイドライン」が国土交通省で作成された。
また、国土交通省及び気象庁では、平成17年6月、大雨による土砂災害が見込まれるときに市町村長が発令する避難勧告等の判断の支援や住民の自主避難の参考となるよう、都道府県と気象庁が共同で発表する「土砂災害警戒情報」についての基本的な考え方や運用に向けて整えるべき事項等を取りまとめた「都道府県と気象庁が共同して土砂災害警戒情報を作成、発表するための手引き」を都道府県に配付した。
このことを受け、平成17年9月に鹿児島県において全国で初めて土砂災害警戒情報の発表が開始され、現在ではすべての都道府県で運用されている。
消防庁では、このような法律や指針・ガイドラインの趣旨を踏まえ、地方公共団体に対して、対策に万全を期すよう要請している。 

(3)高潮

消防庁では、平成11年9月に熊本県不知火海岸で高潮の被害により12人の死者が発生したこと等を踏まえ、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定した。
平成16年8月の台風第16号に伴う高潮では、1年で最も潮位が高くなる大潮の時期に加えて満潮とも重なり、既往最高潮位を60cm近くも超えるところが出るなど、香川県・岡山県・広島県等の瀬戸内地区を中心に、床上浸水など相当数の高潮被害が発生している。このことから、消防庁をはじめとする関係府省では、高潮に対する住民等の理解の向上を図り、高潮災害の被害発生を防止するため、平成12年度に作成されたパンフレット「高潮災害とその対応」を平成17年度に改訂し、インターネット上で公表するとともに、関係機関への配布を行った。

(4)竜巻・突風

平成18年9月に宮崎県延岡市で発生した竜巻により3人の死者が発生した。また、11月に北海道佐呂間町で発生した竜巻により9人の死者が発生した。
こうした人命のみならず、住家、交通、ライフラインなどに甚大な被害をもたらす竜巻・突風災害が続発していることを踏まえ、政府では内閣府、気象庁など関係府省による「竜巻等突風対策検討会」を平成18年11月から平成19年6月にかけて開催し、その対策について検討を行った。その検討を踏まえ、内閣府及び気象庁では、竜巻などの突風からの身の守り方など個人レベルでの対策の周知を図るため、パンフレット「竜巻等突風災害とその対応」を作成しインターネット上で公表したほか、関係府省、地方公共団体など関係機関に配布した。
また、気象庁では、平成20年3月から、身の安全を確保することを目的とした新たな気象情報「竜巻注意情報」の発表を開始した。さらに、竜巻等の突風や短時間強雨、雷の危険度を格子点形式で示す「突風等短時間予測情報(仮称)」を平成22年度から提供できるよう準備を進めている。学識経験者、地方公共団体、報道機関等による『平成20年度突風等短時間予測情報利活用検討会』を開催し、「突風等短時間予測情報(仮称)」の利用上の留意点や利用例等を整理して、必要な周知・広報策について検討を行うこととしている。

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