平成20年版 消防白書

[原子力災害対策等の課題]

平成19年7月の東電変圧器火災を踏まえて、国、地方公共団体、原子力事業者等において、原子力発電所等の防火安全対策の充実強化が図られているところである。今後は、原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院、消防機関など原子力防災関係機関と連携し、複合的な事故、災害等も想定した実践的な消防訓練、防災訓練等の恒常的実施を推進し、PDCAサイクルにより練度を高め、災害に対してより迅速かつ的確に対応できる原子力防災体制を構築していく必要がある。
この場合、消防機関は、原子力事業者に対して積極的に指導・助言していくことが求められている。

平成20年度原子力総合防災訓練の概要

1.実施日時・対象施設・実施機関

(1)日  時
平成20年 10月21日(火)13:00~18:00
     10月22日(水)7:30~13:00
(2)対象施設
東京電力株式会社福島第一原子力発電所(3号機)
(3)実施機関
内閣官房、内閣府、原子力安全委員会、消防庁、文部科学省、経済産業省、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院、福島県、大熊町、双葉町、富岡町、浪江町、広野町、楢葉町、双葉地方広域市町村圏組合消防本部、大熊町消防団、双葉町消防団、仙台市消防局、千葉市消防局など原子力防災関係機関(合計96機関)

2.訓練概要

福島第一原子力発電所3号機において、非常用炉心冷却設備の故障等による冷却機能の喪失から炉心が損傷し、原子炉格納容器からの放射性物質の放出による影響が発電所周辺地域に及ぶおそれがあるという想定で訓練が実施された。消防に関する訓練については次の項目を中心に実施された。

消防庁災害対策本部、現地オフサイトセンターに設置された消防庁現地対策本部、政府原子力災害対策本部間の緊急時通信連絡訓練を実施した。

福島第一原子力発電所自衛消防隊と双葉地方広域市町村圏組合消防本部消火隊による屋外タンク火災を想定した消火訓練を実施した。

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緊急消防援助隊航空部隊として派遣された仙台市消防局ヘリによる発電所周辺状況の偵察訓練を実施した。

原子力発電所において被ばく患者が発生したとの想定で、双葉地方広域市町村圏組合消防本部救急隊、福島県消防防災ヘリ、千葉市消防局ヘリ等により福島県地域防災計画に定められている被ばく医療機関へ患者の重傷度に応じた被ばく患者搬送訓練を行った。

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