平成20年版 消防白書

2 大深度地下空間の防災対策

大深度地下空間の公的利用については、臨時大深度地下利用調査会設置法に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において、大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。
この答申を踏まえ、平成12年5月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が公布され、平成13年4月1日に施行された。
また、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が、それぞれ定期的に開催されている。
大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、従来の施設と比較して消火活動や救助活動がより困難になることが予想されている。
このため、消防庁、国土交通省等関係機関において大深度地下施設の用途、深度、規模等に応じた安全対策について検討を行い、平成16年2月に「大深度地下の公共的使用における安全の確保に係る指針」を取りまとめた。
平成17年8月には、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の適用第1号として、神戸市が認可権者である兵庫県知事に対し、大容量送水管整備事業の事業概要書の提出を行い、平成19年6月に全国初の認可を受けた。今後は、同法を利用する事業が行われる際には、同指針等を踏まえた安全対策が講じられるよう、適切な指導、助言等を行う必要がある。
また、地下街やトンネル等の消防活動が困難な空間において、迅速で円滑な活動を安全に行うためには、指揮本部による一元的な情報管理が特に重要であることから、消防庁では、活動中の隊員位置や活動状況等の情報をリアルタイムに把握することができる、「消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システム」の開発を行い、平成19年3月に公開実験を実施し、最終的な報告書をとりまとめた。
活動支援情報システムは、隊員の位置を特定するため、小型の慣性航法装置と電子タグを組み合わせた位置特定システム、隊員の位置を表示するための位置表示システム、位置データや音声を伝送できる情報通信システムから構成され、各要素技術を組み合わせた小型軽量な可搬式システムの実用化に向けた開発を行った。

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