平成20年版 消防白書

2 火山災害対策の現況

我が国には、現在108(北方領土を含む。)の活火山が確認されている。火山災害の態様は、溶岩の流出、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの放出、津波等多岐にわたっている。
これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づいて諸対策が講じられている。消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された地域や文部科学省において設置されている科学技術・学術審議会での「火山噴火予知計画の推進について」の建議を踏まえ、火山を有する地域の市町村に対して避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。
さらに、平成12年の有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップの作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害時要援護者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行うとともに、平成13年から最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」を開催している。
平成13年度に富士山火山防災協議会の富士山ハザードマップ検討委員会において、火山ハザードマップの作成検討等が進められ、平成16年6月に報告がまとめられた。平成17年9月に富士山火山広域防災検討委員会において「富士山火山広域防災対策報告書」が取りまとめられた。また、平成18年2月の中央防災会議において、富士山火山防災対策として国、都県、市町村等がとるべき方針を定め、「富士山火山広域防災対策基本方針」を決定した。
平成18年11月から、全国の火山を対象として「火山情報等に対応した火山防災対策検討会」が開催され、より効果的な火山防災体制を構築するための火山情報と避難体制について検討し、平成20年3月に「噴火時等の避難に係る火山防災体制の指針」として取りまとめ、関係都道県へ配布している。
なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下の火山災害対策が講じられている。

(1)地域防災計画

火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道府県で16団体、市町村で94団体が整備しているとともに、適宜その見直しも行われている。

(2)広域的な連絡・協力体制

火山の周辺にある地方公共団体では、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。現在、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、北海道樽前山、雌阿寒岳、草津白根山、雲仙岳、阿蘇山、硫黄山の9火山の関係市町村では災害対策基本法に基づく地方防災会議の協議会が設置されており、これらのうち7つの火山においては、それぞれ噴火に関連する事前措置その他の必要な措置について、相互間地域防災計画が作成されている。
また、消防庁では平成14年度に、富士山における火山災害対策をモデルとして、都道府県相互間の広域的な防災体制のあり方を検討する研究会を開催し、その成果として、既存の相互間地域防災計画の実態や課題の整理、都道府県相互間地域防災計画の策定指針の提示などを行った。

(3)防災訓練の実施

消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携の下、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成19年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県5団体で延べ6回、市町村では延べ24回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。

(4)噴火警報、噴火警戒レベルの導入

迅速かつ確実な情報伝達により、火山災害の一層の軽減を図るため、平成19年12月に「気象業務法」の一部が改正され、「噴火警報・予報」の発表が開始された。加えて、関係地方公共団体や住民、登山者・入山者等が取るべき防災対応や行動を分かりやすく示した「噴火警戒レベル」が全国19火山(平成20年11月現在)を対象に運用されており、今後も準備が整った火山から導入される予定である。
関係地方公共団体等においては、地域防災計画等を修正し、レベルに応じて適切に防災対応をとることが必要である。

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