平成20年版 消防白書

第2章 消防防災の組織と活動

第1節 消防体制

1 消防組織

常備消防機関とは、市町村に設置された消防本部及びその下の消防署のことであり、専任の職員が勤務している。平成20年4月1日現在では、全国に807消防本部1,706消防署が設置されており、
15万7,860人の消防職員が勤務している(第2-1-1表、第2-1-1図)。

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前年と比較して消防職員は464人増加しており、また、女性職員も3,283人(前年比149人の増)となっており、年々増加している。

ア 常備化の現況

市町村における現在の消防体制は、大別して、〔1〕消防本部及び消防署(いわゆる常備消防)と消防団(いわゆる非常備消防)とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、〔2〕消防団のみが存する地域がある。
平成20年4月1日現在、常備化市町村は1,749市町村となり、常備化率は市町村数で97.8%(市は100%、町村は96.0%)に達し、人口の99.9%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。

イ 広域化の状況

昭和40年代以降、消防の常備化を進めるため、一部事務組合の設置や事務の委託を活用することにより、消防体制の広域化が推進された。
平成20年4月1日現在、組合による消防本部は316本部(うち広域連合は19本部)であり、その構成市町村数1,126市町村(335市、648町、143村)は常備化市町村全体の64.4%に相当する。また、事務委託市町村数は132市町村(29市、82町、21村)に達している(第2-1-2図)。

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消防団は、市町村の非常備の消防機関であり、その構成員である消防団員は、他に本業を持ちながらも、権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員であり、「自らの地域は自らで守る」という郷土愛護の精神に基づき参加し、消防・防災活動を行っている。
平成20年4月1日現在、全国の消防団数は2,380団、消防団員数は888,900人であり、消防団は1市を除いてすべての市町村に設置されている(第2-1-1表、第2-1-1図)。

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消防団は、
 ・地域密着性(消防団員は管轄区域内に居住又は勤務)
 ・要員動員力(消防団員数は消防職員数の約6倍)
 ・即時対応力(日頃からの教育訓練により災害対応の技術・知識を習得)
といった3つの特性を活かしながら、初期消火や残火処理等を行っているほか、大規模災害時には住民の避難誘導や災害防ぎょ等を、国民保護の場合は住民の避難誘導等を行うこととなっており、特に消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っているなど、地域の安全確保のために果たす役割は大きい。
また、消防団は、平常時においても地域に密着した活動を展開しており、消防・防災力の向上、地域コミュニティの活性化にも大きな役割を果たしている。
なお、消防団員の年齢構成は、30歳代が40.0%と最も多いが、40歳以上の団員が39.9%を占めており、平均年齢は38.3歳となっている(第2-1-3図)。

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我が国の消防は、昭和23年3月7日に施行された消防組織法によって、市町村消防の原則に基づく今日の自治体消防制度として確立し、平成20年3月7日に60周年を迎えました。
これを記念して、消防関係者をはじめ国民がこぞって我が国における消防の発展を回顧するとともに、国民の安心・安全を確保するという消防に課せられた使命の重要性を再認識し、更なる消防防災体制の充実強化を期するため、各種の記念事業を行いました。

○自治体消防制度60周年記念式典

平成20年3月7日の消防記念日に、天皇皇后両陛下の御臨席のもと、日本武道館において挙行しました。式典は、天皇陛下のおことば、内閣総理大臣をはじめとする多くの来賓の祝辞を賜った後、消防行政の発展や地域防災のリーダーとして貢献してきた消防職員及び消防団員等に対して、内閣総理大臣表彰、総務大臣感謝状の授与などを行いました。

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○「119番の日」シンポジウム

自治体消防制度40周年を記念して制定された「119番の日(11月9日)」に、国民の消防全般に対する正しい理解と認識を深めるとともに、広く消防防災に関する意識の高揚と啓発を図り、更なる地域の安心・安全を確立することを目的に、東京都港区虎ノ門のニッショーホールにおいて開催しました。

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○全国消防広報コンクール

全国の消防本部及び消防団で作成されている広報制作物の中から広報技術が優秀なものを表彰し、全国的に紹介することにより、各団体における広報技術の向上を図るとともに、消防防災行政の推進に寄与することを目的に、自治体消防制度50周年の平成10年度から毎年度、開催しており、今回は、「119番の日」シンポジウムにおいて表彰式を行いました。

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○全国消防イメージキャラクター「消太」の作成

より一層「親しまれる消防」を目指して『全国消防イメージキャラクター「消太」』を作成しました。デザインは、漫画家の松本零士氏を委員長とする審査委員会で選考し、名前は、全国からの10,508件の応募の中から選考されたものです。「消太」は、消防庁のHPでデータを提供しており、全国の消防機関で使用されています。

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○全国消防職員・消防団員意見発表会

毎年度、それぞれに行われている消防職員と消防団員の意見発表(会)の過去の最優秀賞及び優秀賞受賞者が一堂に会し、それぞれの意見を発表することにより、意識を共有し今後の消防組織の発展につなげることを目的に行いました。

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○消防防災ロボット・高度な資機材等に関する消防庁長官表彰

消防防災活動を支える消防防災ロボット・高度な資機材の研究開発と実用化、さらには実用品の普及を推進することを目的に行いました。全国の消防機関・消防機器メーカー等から総計45作品の応募があり、平成20年6月27日に展示会および表彰式を行いました。

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○レスキューロボットコンテストにおける消防庁長官賞の授与

消防防災に係る科学技術の推進を図るために実施されている「レスキューロボットコンテスト」において、特別賞として「消防庁長官賞」を授与しました。

○消防士・消防団員を主人公とした漫画・ビデオの募集

国民の生命を守る消防士や消防団員の日常や火災災害現場における活動を魅力的に描いた漫画、ビデオを募集し、優秀な作品を全国的に紹介することにより、消防防災行政の推進に寄与することを目的に行いました。

○記念誌「自治体消防60年のあゆみ」発刊

自治体消防制度60周年を記念して、これまでの歩みを振り返り、合わせて今後の消防行政を展望する「自治体消防60年のあゆみ」を発刊しました。

このほか、消防庁では、多くの自治体消防制度60周年記念事業を行い、また、都道府県、消防本部をはじめ各地の消防機関・消防関係団体で、自治体消防制度60周年を記念した事業が行われました。

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