平成20年版 消防白書

2 消防施設

(1)消防車両等の整備

消防本部においては、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救急自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。
また、消防団においては、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2-1-2表)。

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(2)消防水利

消防水利は、火災鎮圧のためには消防車両等とともに不可欠なものである。
消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。
自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。
また、人工水利については、消火栓が76.2%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は22.8%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽の設置が促進されてきている(第2-1-3表)。

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(3)消防通信施設

火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話(119番)、消防通信網等がある。

ア 119番通報

火災報知専用電話(119番)は、加入電話・携帯電話・IP電話等によって消防機関に火災、救急、救助、その他の災害の発生等を通報するものである(第2-1-4図)。

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また、平成19年中の119番通報件数は8,475,781件となっており、その内訳は救急・救助に関する通報件数が全体の60%を占めている(第2-1-5図)。

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近年の携帯電話・IP電話等(以下「携帯電話等」という。)の普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が増加し、通報総数に占める割合は約3割となっている。
特に携帯電話からの119番通報については、発信者が周辺の地理に不案内な場合も多い等の課題があったが、平成19年4月から、携帯電話等からの119番通報時に発信場所の位置情報が各消防本部に通知される共通のシステム(以下「位置情報通知システム」という。)の運用が始まった。平成20年10月1日現在、170本部においてこのシステムが導入されており、迅速かつ効果的な指令業務に役立っている。
さらに、位置情報通知システムに係る全国の消防機関の財政負担の軽減を図るため、この位置情報通知システムと従来の固定電話からの新発信地表示システムとの統合を図るための検討を行うとともに、ICT化の進展に伴う電話サービスの多様化に今後とも適切に対応していく必要がある。

イ 消防通信網

無線通信網である消防救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である(第2-1-4図)。
消防電話は、消防本部、消防署、消防分署及び関係行政機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話である(第2-1-4図)。
また、映像を伝送するシステムとしては、高所監視カメラや消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラで撮影された映像情報を都道府県や消防本部(消防指令センター等)に伝送するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに消防庁、都道府県及び他の市町村などへも伝送可能なシステムの構築も進められている。これは発災直後の被害の概況を把握するとともに、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、今後も整備促進が期待されている。
さらに、消防庁は、災害時に地上での通信途絶・輻輳が発生した場合等に備えイリジウム衛星携帯電話端末機器やヘリコプターテレビ電送システム受信固定局未整備地域における被害状況の迅速な把握のため同システムの可搬型受信装置、その他緊急消防援助隊の円滑な活動のために各種通信機器を消防援助隊指揮支援隊の所属する消防本部又は各都道府県代表消防機関を対象に無償使用させる制度を設けている。

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