4 安全衛生体制の整備
(1)安全衛生体制
現在、労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付ける規定が適用される消防本部・署所はないものの、消防庁においては、公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実かつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程」、「訓練時における安全管理に関する要綱」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、体制の整備の促進及び事故防止の徹底を図っている。
また、消防職員の衛生管理についても、特に配慮する必要があることから、「消防における衛生管理に関する規程」を示すなどの対応を行っている。
(2)惨事ストレス対策
消防職員は、火災等の災害現場などで、悲惨な体験や恐怖を伴う体験をすると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、これにより、身体、精神、情動又は行動に様々な障害が発生するおそれがある。このような問題に対して、消防機関においても対策を講じる必要があるが、各消防本部においては、情報不足や専門家が身近にいないことなどが課題とされていた。
消防庁では、平成13年12月から精神科医や臨床心理士等の専門家の協力を得て、消防職員の惨事ストレス対策について研究を重ね、全国の消防本部と消防学校に対するアンケート調査の結果及び消防本部による体系的な惨事ストレス対策のあり方についての検討を取りまとめた「消防職員の惨事ストレスの実態と対策の在り方について(平成15年2月)」及び各消防本部等の取組状況についての調査及び分析を取りまとめた「消防職員の現場活動に係るストレス対策フォローアップ研究会報告書(平成18年3月)」を全国の消防本部、消防署所等に配布するなど、各消防本部における惨事ストレス対策を推進している。
また、報告書の提言に基づき、平成15年に、消防職員が惨事ストレスにさらされる危惧のある災害が発生した場合、現地の消防本部の求めに応じて、精神科医等の専門家を派遣し、必要な助言等を行う「緊急時メンタルサポートチーム」を創設、平成18年にメンバーの増員を図り、体制を強化している。
同チームにおいてはこれまで、平成15年に2件、平成16年に4件、平成17年に5件、平成18年に1件、平成19年に4件、平成20年には4件(平成20年10月現在)の派遣実績がある。
さらに、平成19年度から、消防学校において惨事ストレスに関する授業を担う教職員や消防本部において惨事ストレス対策を担当する消防職員を対象に、惨事ストレス対策についての基礎的な知識を習得することを目的とした「消防職員の惨事ストレス初級研修」を開催し、各消防本部等における惨事ストレス対策の更なる促進を図っている。
(3)安全管理体制の強化
平成15年6月の神戸市における建物火災、7月の熊本県水俣市における土石流災害、8月の三重県多度町(現桑名市)におけるごみ固形化燃料発電所爆発火災において、消防職員及び消防団員が殉職する事故が相次いで発生した。消防庁では、この事態を重く受け止め、今後の再発防止に資するため「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、安全確保策の充実強化策などについて検討を行い、安全への高い意識と高度な判断力の重要性、安全管理のための情報共有化方策、心理学の要素を反映した効果的な教育訓練手法、現場指揮体制の充実等について平成16年11月に報告書を取りまとめた。また、安全管理のための情報共有化方策として、「消防ヒヤリハットデータベース(消防職団員の事故事例の情報収集・提供システム)」を運用している。