平成20年版 消防白書

7 防災教育の普及

大規模地震の発生等が懸念される中、国内における防災・危機管理体制の充実が急務とされており、地方公共団体の幹部職員の危機管理能力及び防災担当職員の実践的対応能力の向上、さらには住民や地域の防災リーダー等の防災力の強化を図ることは緊急の課題である。
このため、消防大学校等における教育訓練については、受講対象の拡大や、その内容をより実践的かつ体系的なものとする取組を進めている。また、インターネットを活用した遠隔教育(防災・危機管理e-カレッジ)により、住民や消防職団員・地方公務員等を対象としたコンテンツを提供しており、今後ともカリキュラム等の充実・強化を図っていくこととしている。

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e-ラーニングの活用による幹部科教育について

平成19年4月以降に入校した幹部科学生から、ICT(情報通信技術)を活用した消防大学校e-ラーニング教育を行っており、平成20年12月までに約530人が受講しています。
e-ラーニング教育は、消防大学校入校前に数か月間行うもので、入校予定者が所属する消防本部等に配信される教材(講義映像のほか、解説画面や参考資料などを含みます。)を用いて個別学習を行って事前に知識を習得します。
学習を進める上で不明な点等については、サポートデスクを設置し対応しているほか、担当教官が各学生の学習進捗状況を随時確認するとともに、電子メールによるアドバイスを行うなど、学生への指導体制を確立しています。また、e-ラーニングシステム上の掲示板機能を利用して、学生が相互にコミュニケーションを図ることができます。
また、入校後は学習到達度を確認するために全科目の効果確認テストを行うほか、教科目によっては理解を深めるために課題を提示し、各学生から検討、研究した結果を提出させ、さらに講師が実務的な解説を加える等、授業展開を工夫しています。あわせて、e-ラーニングの学習内容をもとにした実践重視の集合教育(課題研究、図上訓練等)を行い、応用力を備えた消防幹部の養成を図っています。
幹部科を卒業した学生からは、e-ラーニングによる学習について、学習環境において一部課題があるものの、受講者の都合に合わせて学習できるため効率的であり、また、理解できなかったところは繰り返し確認しながら学習を進められたことなどから、高い評価を得ています。
幹部科にe-ラーニングを導入したことにより、短期間で効率的・効果的に授業を進めることができるようになり、全般的に成績の向上にも結びつけることができました。

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