平成20年版 消防白書

2 今後の取組

(1)航空消防防災体制の整備

大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応し、国民の信頼と期待に応えるために、消防防災ヘリコプターによる航空消防防災体制の一層の充実を図る必要があり、消防庁では、従来から消防防災ヘリコプターの全国的配備を推進し、現在、45都道府県で配備されているところである。
近年の大規模災害においては、多くの消防防災ヘリコプターが緊急消防援助隊として出動し、その高速性、機動性を活かした迅速な情報収集、指揮支援、消火・救急・救助活動を実施するなど、大きな役割を果たしており、広域的な連携の下、その活用を一層推進していく必要がある。

(2)大規模災害時等での消防防災ヘリコプターの有効活用に向けて

大地震により道路等が寸断されても、迅速かつ確実に情報を取得するためには、消防防災ヘリコプターを活用して、上空から情報収集活動を行うことが極めて有効である。そのため、被災地の情報収集手段として必要不可欠なヘリコプターテレビ電送システム及び夜間における被災地情報収集に適したより性能の高い高感度カメラ・赤外線カメラの整備を図ることとしている。
また、大規模な山林火災等では、消防防災ヘリコプターを活用し、地上での消火活動が困難な区域に、空中から消火活動を実施することで、火災の延焼防止・早期の鎮火を図ることができる。
このため、消防庁では、緊急消防援助隊として出動する消防防災ヘリコプター、ヘリコプターテレビ電送システム、赤外線カメラ等の高度化資機材及び消火用タンクの整備に対して補助金を交付し、大規模災害時等における航空消防防災体制の充実強化を図っている。

(3)消防防災ヘリコプターの効果的な活用に関する検討会の実施

消防防災ヘリコプターは、消火・救助・救急及び情報収集等その任務は多岐に渡り、災害出動件数も年々増加している。特に、救急業務については、各方面から大きな期待が寄せられており、迅速かつ一層質の高い救急が求められている。
また、平成7年の阪神・淡路大震災を契機に、市街地火災に対するヘリコプターによる空中消火の関心が高まっており、東海地震等における緊急消防援助隊アクションプランにおいても、その活動を想定しているところであるが、より安全かつ効果的に行うためには、多くの課題が残されている。
これらのことから、平成19年10月29日に消防防災ヘリコプターの効果的な活用に関する検討会を開催し、以下3つの検討項目を設けて、消防防災ヘリコプターのより効果的な活用方策の構築について検討・協議を行っており、今後も増加することが予測される国民からの需要に応え、消防防災ヘリコプターのより効果的な活用に向けた積極的な施策を推進するため、平成21年3月末までに検討結果を取りまとめこととしている。
〔1〕 空中消火技術のより効果的な活用体制の構築
〔2〕 救急活動への積極的な活用推進体制の構築
〔3〕 365日・24時間運航体制の構築

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