平成20年版 消防白書

第8節 国と地方公共団体の防災体制

1 国と地方の防災組織等

(1)防災組織

地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県及び市町村に地方防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、日本赤十字社等関係公共機関の参加も得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することを目的としており、中央防災会議においては我が国の防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。
また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。

(2)災害対策基本法の改正等

阪神・淡路大震災以降、防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の大改正と数次にわたる防災基本計画の修正が行われている。
災害対策基本法は、平成7年6月に都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員等による緊急通行車両の通行の措置の創設等を内容とする改正が行われたほか、同年12月には緊急災害対策本部の設置要件の緩和等、国・地方公共団体を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。
防災基本計画は、平成7年7月には、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえ、全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められた。
平成9年6月には海上災害、原子力災害等の事故災害について、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るための修正が行われ、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策の各編が追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られたが、平成12年5月には茨城県東海村におけるウラン加工施設における臨界事故を踏まえた原子力災害対策特別措置法の施行等を受け、原子力災害対策編の修正が行われ、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程が加わるなど、さらなる対策の充実・強化が図られた。
平成16年3月には東南海・南海地震防災対策推進基本計画の策定等、震災対策編を中心に修正が行われ、平成17年7月にはインド洋津波災害を踏まえた津波防災対策の充実、集中豪雨時等の情報伝達及び高齢者等の避難支援の強化等についての修正が行われた。
また、最近では、平成20年2月に、企業の事業継続計画の策定を強力に進めるための条件整備、平成19年7月の新潟県中越沖地震の教訓を踏まえた原子力災害対策の強化、被災者生活再建支援法の改正を踏まえた復興支援強化、緊急地震速報の本格導入等、最近の災害対策の進展を踏まえた修正が行われた。

(3)消防庁の防災体制

消防庁は、実戦部隊となる消防機関を所管し、地方公共団体から国への情報連絡の窓口になるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っているが、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化も図っている。
平成8年5月には、自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省(現・総務省)・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる(省庁再編に伴い、現在は消防庁防災業務計画)。
消防庁は、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。
また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。
平成15年8月には、大規模災害等が発生した際により迅速かつ的確な初動対応が実施できるよう、総務省内に消防防災・危機管理センターを整備し、平成16年には、同センターに設置される消防庁災害対策本部の体制を情報収集中心のものから、より機動的な災害応急対応中心のものへと見直した。同時に、災害対策本部の編成について災害種別によって課室別にその都度編成していたのを、災害対策本部の組織体制を原則として一本化し、加えて、平成17年度には大規模地震やNBCテロ災害等の様々な災害発生時において、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示や現地における的確な災害対応等を迅速かつ適切に実施するため、消防庁職員等を被災地へ迅速に派遣し、併せて、現地調査、情報収集を行うために消防庁ヘリコプターを導入した。さらに、平成17年8月には、業務の専門性の確立、責任体制の明確化を一層図ることを目的に、大規模地震対策、消防防災の情報通信システム、緊急消防援助隊、救助・テロ対策、国民保護の企画・運用等の緊急対応や地方公共団体との連絡調整等の各業務を統括する「国民保護・防災部」を設置した。

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