平成20年版 消防白書

3 防災訓練の実施

大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に軽減するために重要であり、そのためには日頃から実戦的な対応力を身につけておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では「防災・危機管理教育のあり方に関する調査懇談会報告書」(平成15年3月)に基づき、地方公共団体における図上型訓練等により実戦的な訓練の実施を促進することとしている。
平成15年度から行われた「地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデル作成調査研究」について、平成19年度には同研究の集大成として「地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練)実施要領のあり方に関する調査研究報告書(平成19年度)」及び「市町村による図上型防災訓練の実施支援マニュアル」を取りまとめ、地方公共団体に配付した。平成20年度においては研究対象を風水害とし同調査研究を進めるとともに、10月には地震や津波、台風などの大規模な災害に際し、市町村長等のリーダーシップによる的確な意思決定能力の向上と応急体制の点検、住民と行政との信頼関係に基づく地域防災力の強化を図ることを目的として、全国2ブロック(東日本、西日本)で防災特別セミナー「防災危機管理ブロック・ラボ」を開催し、都道府県・市町村の防災担当幹部等、延べ61人の参加を得た。
また、消防庁及び財団法人消防科学総合センターから図上訓練支援チーム(専門家及び指導員で構成)を都道府県に派遣し、図上訓練の企画立案から実施等に至る過程を指導支援することを通じ、市町村における実戦的な防災訓練(図上型訓練)の普及を促進する「図上訓練体験研修」を実施した。
平成19年度においては、都道府県で延べ341回の防災訓練を実施したほか、市町村においても延べ5,420回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震・津波に対応するものが最も多く、次いで、台風等風水害、土砂災害、原子力災害、コンビナート災害、林野火災となっており、市町村では地震・津波、風水害、大火災、土砂災害、林野火災となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実動)訓練が最も多い。

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