平成20年版 消防白書

3 研究成果をより広く役立てるために

消防研究センターでは、研究によって得られた成果を、全国の消防職員をはじめとする消防関係者はもとより、一般の方々にも広く役立てることを目的に、以下の活動を行っている。

(1)一般公開

毎年4月の「科学技術週間」にあわせて、消防研究センターの一般公開を実施している。平成20年度は4月18日に実施し、581人の参加を得た。
一般公開では、実験施設や実験場などの公開、展示や実演を用いた研究の紹介を行っている。平成20年度は12の内容を公開し、中でも、自動車用に開発されているバイオガソリン、バイオディーゼルの燃焼実験などが、参加者の注目を集めた。

(2)全国消防技術者会議

全国の消防技術者の研究発表、意見交換等の場として昭和28年から「全国消防技術者会議」を毎年開催している。
この会議では、各地の消防本部で実施された研究の成果の発表、消防機器の開発・改良に関する紹介、そして火災原因調査の事例紹介などを行っている。平成19年度は、10月18日及び19日の2日間、東京都港区虎ノ門のニッショーホールにおいて開催された。

(3)消防防災研究講演会

消防研究センターの研究成果の発表及び消防関係者や消防防災分野の技術者や研究者との意見交換を行うため、平成9年度から「消防防災研究講演会」を開催している。
この講演会では毎年特定のテーマを設けており、平成19年度は「廃棄物・バイオマス等の環境対策に伴う新たな火災危険への取組をテーマとして、近年増大している廃棄物火災に焦点を当てた研究発表及び討論を実施した。

(4)火災調査技術会議

消防本部が消火活動の後に実施する火災調査の技術の向上を目的として、「火災調査技術会議」を開催している。
この会議は、全国の主な都市で年間5回程度開催しており、各地の消防本部における特異な火災事例の紹介や、最新の調査技術、機器に関する情報交換を行っている。平成19年度は、東京、名古屋、仙台、大阪、北九州の5都市で開催した。

(5)消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文の表彰

消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的として、消防職団員や一般の方による消防防災機器の開発や改良及び消防防災に関する研究成果のうち特に優れたものを消防庁長官が表彰する制度を平成9年度から実施している。応募の資格に制限はなく誰でも応募することができるため、多くの人に開かれた発表の機会となっている。
平成19年度は69編の応募があり、12編の作品が表彰された。

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震における消防研究センターの活動

1 活動概要

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震(6月14日8時43分頃発生)に際して、消防研究センターは、土砂崩れ現場における救助作業の安全確保を支援するため、現地へ土砂災害を専門とする研究員を派遣しました。派遣された研究員は、ヘリコプターからの広域調査と2つの土砂災害現場での捜索救助活動の安全確保に関する助言を行いました。

2 ヘリコプターによる広域調査

15日朝に実施したヘリコプターでの調査では、まず、どのような災害が発生したのかという全体的な状況の把握を行いました。次に、救助活動が継続していた3つの土砂災害地点について、周辺に亀裂などの異状がないか、以前に地すべりが発生した痕跡がないか、上流に土砂ダムができていないか、などについて調べました。このときには、これらの危険な兆候は見つかりませんでした。
栗駒山が大きく崩れ、土砂が土石流になって温泉宿を破壊した現場の上流において、土砂が残っていたり、岸が崩れたりして、川の流れが悪くなっていると危険なので、そのようなものがないか、川筋に沿って飛行してもらい、この時点では見あたらないことを確認しました。

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3 土砂災害現場での捜索救助活動の安全確保

災害現場では、崖やその周辺を調査して、崩れ残った不安定な部分がないか、地下水などの動きがないか、積もった土砂がもう一度災害を引き起こさないかなどについて分析し、監視方法や特に監視すべき場所の指定、関係他機関への協力要請などの対策を提案しました。

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厳しい環境の中で高い士気を持って活動をする救助隊員。急斜面で足場も悪く、何かあったときにも待避が難しいため、危険度の分析には十分な注意が必要でした。

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