平成20年版 消防白書

2 被災地での活動

第1陣は北京を経由して現地時間5月16日(金)2時23分に成都空港に到着し、陸路6時間以上の移動の末、中国側から活動サイトとして指示を受けた広元市青川県関庄鎮に到着した。この現場は、地震による土砂崩れで町全体が完全に土砂に埋まっている状況だった。

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国際緊急援助隊救助チームの規模・装備等を勘案すると、このような大規模土砂災害現場で効果的な救助活動を行うことは極めて困難であることから、直ちに中国側と協議し、都市型捜索救助活動に適し、生存者の存在する可能性の高い同県喬庄鎮へ移動することとした。4時間近くを要して到着した喬庄鎮の現場では、6階建ての病院の建物が倒壊しており、その下に少なくとも母子2人が埋まっているとの情報を得た。そのため、到着後すぐに電磁波探査装置や二酸化炭素探査装置を活用して生体反応を探るとともに、重機(ドラグショベル)を用いて瓦礫を排除しながら徹夜で捜索救助活動を展開した。翌朝、母子(27歳と2ヵ月)の遺体を発見・収容し、親族に引渡すこととなったが、担架に収容した母子の遺体に対して、整列し黙祷を捧げる国際緊急援助隊救助チームの姿は、マスコミを通じて中国内外に報じられ、厳正な規律と真摯な態度を評価する声が聞かれた。

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翌5月17日(土)12時20分に第2陣が第1陣と合流した。国際緊急援助隊救助チームは、喬庄鎮に生存者がいる可能性は極めて低いと判断したため中国側と協議の上、新たな活動サイトを約300km離れた綿陽市北川県曲山鎮に決定した。地震による道路状況の悪化と車両渋滞から現地到着に10時間以上を要した。現地の活動サイトとなった北川第一中学校の倒壊現場においては、二酸化炭素探査装置を活用して生体反応を探りながら現場確認を実施した。
翌5月18日(日)は、北川第一中学校をメインの活動場所としつつ、チームの一部を市内の捜索に向かわせた。
北川第一中学校は、5階建て校舎の1、2階部分が挫屈し、多くの生徒がその下敷きになった現場であり、電磁波探査装置やエンジンカッター等を活用して捜索救助活動を実施した。
なお、現地では、中国の北京消防隊等と協力することとなり、この中には日本の消防機関で研修を受けた経験のある指揮官もいたことから、十分な連携を保ちつつ、救助活動を実施することができた。残念ながらこの現場でも生存者の発見には至らず、結局13人の遺体を収容した。

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翌5月19日(月)は、前日に捜索救助活動を行った市内での活動を予定していたが、市内を流れる河川の上流にできた土砂崩れダムが決壊する危険があるとの情報を得たため、専門家の意見も聴取しつつ中国側と協議し、この日の活動を中止することとした。その後、同日深夜中国側と調整した結果、国際緊急援助隊救助チームは中国国内での救助活動を終了し、5月21日(水)に帰国することとなり、今回の派遣活動は実質的に終了となった。

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