平成22年版 消防白書

4 基本指針・国民保護計画

国民保護法では、武力攻撃事態等及び緊急対処事態に至った場合に備えて、政府において基本指針を定め、これに基づいて指定行政機関(各府省等)の長、都道府県知事及び指定公共機関がそれぞれ国民保護計画又は国民の保護に関する業務計画(以下「国民保護業務計画」という。)を作成することとされている。また、市町村長及び指定地方公共機関は、都道府県の国民保護計画に基づいて市町村の国民保護計画又は国民保護業務計画を策定することとされている。
これらの基本指針、国民保護計画等は、武力攻撃事態等及び緊急対処事態に至った際により迅速かつ的確な対応ができるよう、国民保護訓練の結果等を踏まえて随時見直しが行われている。

(1)基本指針

政府においては、平成17年3月25日に基本指針を閣議決定したところであり、その内容は以下のとおりとなっている。

<1> 基本的人権の尊重や指定公共機関の自主性の尊重など、国民保護措置の実施に関する基本的な方針
<2> 武力攻撃事態を類型化し、それぞれの特徴及び留意点を示した武力攻撃事態の想定に関する事項
<3> 国民保護措置を的確かつ迅速に実施するための体制の整備
<4> 住民の避難、避難住民等の救援、武力攻撃災害への対処に関する措置、国民生活の安定、武力攻撃災害の復旧等についての国、地方公共団体等のとるべき措置に関する事項
<5> 武力攻撃に準ずる大規模テロ等の緊急対処事態への対処
<6> 国民保護計画等の作成手続

また、平成20年10月の改正では、
<1> 市町村長又は都道府県知事は、国民保護措置が実施される現場において、現地関係機関*3の活動を円滑に調整する必要があると認めるときは現地調整所を設置すること。

*3 現地関係機関:消防機関、警察機関、自衛隊、海上保安庁、医療機関、関係事業者等の現地で活動する機関のことをいう。

<2> 国の現地対策本部長は、情報交換及び相互協力のため必要に応じ、現地対策本部と関係地方公共団体の国民保護対策本部等による武力攻撃事態等合同対策協議会を開催すること。
等が盛り込まれた。

(2)消防庁国民保護計画

指定行政機関である消防庁も国民保護計画を策定しており、消防庁が実施する国民保護措置について、その内容、実施方法、体制、関係機関との連携方法等を定めている。その概要は以下のとおりである。

<1> テロやゲリラの侵攻などの事案において、状況により、全職員体制の消防庁緊急事態連絡室を設置し、地方公共団体との連携や情報交換のための体制を整備すること。
<2> 必要に応じ、全国瞬時警報システム(J‐ALERT)等により、地方公共団体や住民に瞬時に情報を伝達すること。
<3> 自然災害の場合等において他県の消防部隊が応援に駆けつける緊急消防援助隊の仕組みを、武力攻撃やテロの場合においても活用するため、部隊の増強や資機材の整備を図ること。
特に、NBC災害*4に対応するためには、対応能力を持つ部隊による応援が重要なため、拠点となる消防本部の充実を図ること。

*4 NBC災害:核(Nuclear)兵器等、生物(Biological)剤及び化学(Chemical)剤を用いられたことに伴う災害をいう。

<4> 住民の避難誘導において重要な役割を果たす消防団や自主防災組織の充実を図るため、啓発に努めるとともに設備の整備等を支援すること。
<5> 住民の避難誘導や被災者の救助に当たっては、事業所の協力が必要となることから、被災時における事業所と地方公共団体との連携を支援すること。

(3)都道府県国民保護計画

都道府県の国民保護計画では、基本指針に基づき、当該都道府県の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該都道府県が行う国民保護措置に関する事項やその実施体制、市町村の国民保護計画及び指定地方公共機関の国民保護業務計画の作成の基準となるべき事項等を定めることとされている。
都道府県国民保護計画は平成17年度までにすべての都道府県で作成済みである。また、平成20年10月の基本指針の改正に伴い、平成22年度までに43道府県で現地調整所に関する記述や武力攻撃事態等合同対策協議会に関する記述を盛り込んだ計画の変更が行われている。

(4)市町村国民保護計画

市町村の国民保護計画は、都道府県の国民保護計画に基づき、当該市町村の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該市町村が行う国民保護措置に関する事項や実施体制等を定めることとされている。
平成22年4月1日現在で、市町村の国民保護計画は全国1,750団体のうち14団体が未作成となっており、消防庁として都道府県に対し、市町村に対する的確な助言や速やかな協議の実施を要請している。

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