平成22年版 消防白書

はじめに

はじめに

我が国の消防は、昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して以来、関係者の努力の積み重ねにより制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、日々国民の安全の確保に努めているところです。
しかしながら、本年は、2月にチリ中部沿岸を震源とする地震による津波や、梅雨期における大雨、10月下旬の鹿児島県奄美地方における大雨等の大規模自然災害が発生し、全国各地に大きな被害をもたらしたところです。また、3月には9名の死傷者を伴う北海道札幌市認知症高齢者グループホーム火災、7月には5名が死亡した埼玉県消防防災ヘリコプターの墜落事故が発生し、6月から9月にかけては熱中症による多数の救急搬送事案が報告されるなど、消防防災行政を取り巻く環境は、予断を許さないところです。
このように災害等から国民の生命、身体及び財産を守るという消防の責務はますます大きなものとなってきており、その中で国民の安心と安全を向上させていくためには、総合的な消防防災行政を迅速かつ積極的に推進していく必要があります。
平成22年版消防白書では、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、緊急消防援助隊や消防の広域化などに言及している消防防災の組織と活動、国民保護への取組、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり、国際的課題への対応、消防防災の科学技術の研究・開発等について解説するとともに、重要性、話題性の観点から6項目をトピックスとして紹介しています。
トピックスIは、チリ中部沿岸を震源とする地震による津波の概要と消防庁の対応について、トピックスIIは、消防機関による傷病者の搬送及び医療機関による傷病者受入れの実施に関する基準の策定状況について、トピックスIIIは、消防の広域化の全国の状況及び今後の取組について、トピックスIVは、消防救急無線のデジタル化の概要と今後の取組について、トピックスVは、消防団の充実強化として、消防団員確保に向けた各種施策の概要と今後の取組について、トピックスVIは、屋外タンク貯蔵所の保安検査の周期について、消防庁で検討を行うこととなった経緯やその検討状況について記述しています。
これらを踏まえ、この白書が国民の生命、身体及び財産を災害から守る消防防災活動において、国民の皆様の認識と理解を深めるとともに、国、地方公共団体だけではなく住民、企業も含めた総合的な消防防災体制の確立に広く活用いただけることを願います。

平成22年11月

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