平成22年版 消防白書

2 PFOSを含有する泡消火薬剤の排出抑制について

泡消火設備は、駐車場や危険物施設等において用いられている消火設備である。しかしながら、一部の泡消火薬剤に用いられている有機フッ素化合物の一種であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS*5)又はその塩が、難分解性、生物蓄積性、毒性及び長距離移動性を有する残留有機汚染物質から人の健康及び環境を保護することを目的とした「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」において、製造及び使用等が制限されることとなった。

*5 PFOS:ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)(Perfluorooctane sulfonic acid)の略称。ストックホルム条約において、難分解性、生物蓄積性、毒性及び長距離移動性を有する残留性有機汚染物質として、規制対象に指定された。ピーフォスとよむ。

これを受け、我が国においても、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」等が改正され、その製造、輸入等が禁止されるとともに、業として泡消火薬剤等を取扱う際には、回収や保管容器への表示等の義務が課されることとなった。
消防庁としては、今後、関連省庁やメーカー団体等と連携しながら、上記法令の周知徹底を図るとともに、PFOSを含有する泡消火薬剤の不要な放出を抑えていくことができるよう更なる対策を講じていくこととしている。

ISOにおける消防隊員用個人防護装備の審議について

ISO(国際標準化機構)は、国家間の製品等の標準化活動の発展を促進することを目的として設置されています。ISOには、専門部会(TC)、分科委員会(SC)及び作業部会(WG)が設置されており、防火服等の消防隊員用個人防護装備については、「人体安全の防護衣及び装置」に関する専門部会及びその下部組織である分科委員会(ISO/TC94/SC14)で審議されています。日本国内では、SC14国内対策委員会において審議が行われており、委員として消防庁、消防大学校消防研究センター、政令市消防本部、全国消防長会及び各装備品の製造メーカ等が選任され、(財)日本防炎協会が事務局となっています。
防火服については、平成11年に国際規格(ISO11613:1999)が定められています。現在、ISO/TC94/SC14においては、消防隊員用個人防護装備一式(防火帽、防火服、防火靴、防火手袋等)の新たな規格を審議されているところです。

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これまでのISOにおける消防隊員用個人防護装備に関する主な審議経過については、次のとおりです。

平成11年12月
ISO11613:1999(防火服の国際規格)が制定される。
平成12年
TC94の分科委員会SC13(防護服に関するもの。)の作業部会WG4にて、ISO11613:1999の改正についての審議が開始される。
平成14年4月
WG4が発展的解散、分科委員会SC14(消防隊員用個人防護装備に関するもの。)として独立し、その作業部会WG2(建物火災用個人防護装備に関するもの。)において、ISO11613:1999についての改正の審議を継続することとされた。
平成21年10月
ISO/DIS11613.3(消防隊員用個人防護装備一式の国際規格第3案)が事務局から提案され、各国の投票の結果、否決された。
平成21年12月
アメリカ・シャーロットにおいて開催されたSC14に関する国際会議において、今後、ISO/DIS11613.3の修正版としてISO/DIS11613.4を作成し審議を継続することが決定された。
平成22年4月
ISO/DIS11613.4が再度事務局から提案され、各国の投票の結果、否決された。
平成22年5月
ニュージーランド・ウエリントンにおいて開催されたSC14に関する国際会議において、ISO/DIS11613.4が協議の結果、廃案となった。

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消防庁では、消火活動時における消防隊員の安全性の向上の観点から、消防隊員用個人防火装備の持つべき性能のあり方等について検討を行うため、「消防隊員用個人防火装備のあり方に関する検討会」を開催しています。

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