平成23年版 消防白書

5 民間自衛消防力の確保

切迫する大地震の危険に対応するため、平成19年6月の消防法改正により、大規模・高層建築物等の管理権原者は、〔1〕地震災害等に対応した防災管理に係る消防計画を作成し、地震発生時に特有な被害事象に関する応急対応や避難の訓練の実施等を担う「防災管理者」の選任及び〔2〕火災その他の災害による被害を軽減するために必要な業務を行う自衛消防組織の設置が義務付けられた。
この消防法改正は、平成21年6月に施行されたが、関係事業所においては、自らの事業所等であらかじめ地震発生時にどのような被害が発生しうるのか検討した上で、被害軽減対策や応急活動体制等の内容を整理するとともに、被害の想定や必要な対応行動が十分かどうか、それに対応した体制が備えられているかどうか等について、訓練等を通じて定期的に改善・見直ししていく仕組み(PDCAサイクル)を消防計画に盛り込み、訓練実施結果の検証や被害想定に係る知見の蓄積を通じ、常に内容を見直して必要に応じ改善していくことが重要である。また、消防機関においては、届出された防災管理に係る消防計画に対する指導、助言が的確にできるよう、消防職員の資質を向上させることが重要であり、必要な研修や教育訓練等に取り組む必要がある。
このため、消防庁では、関係事業所における消防計画の策定や訓練の実施、消防機関における消防計画の審査等が円滑に行われるよう、関係団体の協力を得ながら、モデルプランや標準的な審査マニュアルを提示する等、支援しているところである。
さらに、消防用設備等は災害時の応急活動のために用いられるものであり、大規模地震の際にも有効に機能することが求められる。このため、消防庁では、平成20年度から「大規模地震に対応した消防用設備等のあり方に関する検討会」において、検討した。平成21年9月には、それまでの検討結果を踏まえ、消防法施行規則等を改正し、防火対象物における〔1〕緊急地震速報に対応した非常放送及び〔2〕停電時の長時間避難に対応した誘導表示について技術基準を定めた。

関連リンク

はじめに
はじめに 我が国の消防は、昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して以来、関係者の努力の積み重ねにより着実に発展し、国民の安心・安全確保に大きな役割を果たしてきました。 本年は、3月11日に発生した東日本大震災によって、死者・行方不明者併せて約2万人という甚大な...
第1節 本震
第I部 東日本大震災について 第1章 地震・津波の概要 第1節 本震 平成23年3月11日14時46分、三陸沖(北緯38度1分、東経142度9分)の深さ24kmを震源として、我が国観測史上最大のマグニチュード9.0*1の地震が発生した。この地震により宮城県栗原市で震度7を観測したほか、宮城県、福島県...
第2節 余震等
第2節 余震等 気象庁によると、東北地方太平洋沖地震の余震は、岩手県沖から茨城県沖にかけて、震源域に対応する長さ約500km、幅約200kmの範囲に密集して発生しているほか、震源域に近い海溝軸の東側、福島県及び茨城県の陸域の浅い場所で発生している(第1-2-1図)。  これまでに発生した余震は、最大...
第1節 人的被害
第2章 災害の概要 第1節 人的被害 東北地方太平洋沖地震及びその後の余震は、地震の揺れ及び津波により東北地方の沿岸部を中心として、広範囲に甚大な被害をもたらした。 被害の中でもとりわけ人的被害については、死者16,079名、行方不明者3,499名(11月11日時点)という、甚大な被害が発生した(...