平成23年版 消防白書

[風水害対策の現況]

1 風水害対策の概要

梅雨前線の影響による大雨や台風の日本列島への接近・上陸は、しばしば日本列島に大きな被害をもたらしている。また近年は、短時間強雨の回数が増加傾向にあるといわれており、短時間に局地的に非常に激しい雨が降ることで中小河川の急な増水、アンダーパス*1の浸水等を引き起こし、被害を生じさせる事例が多く発生している。

*1 アンダーパス:交差する鉄道や他の道路などの下を通過するために掘り下げられている道路などの部分をいう。周囲の地面よりも低くなっているため、大雨の際に雨水が集中しやすい構造となっている。

洪水、土砂災害、高潮、暴風・竜巻・突風などの風水害の様々な態様に対し、万全の対策がとられる必要がある。特に、避難勧告等の具体的な発令基準の整備、災害時要援護者*2対策は、災害による人的被害を防ぐための対策として非常に重要であり、早急な体制整備が必要である。

*2 災害時要援護者:必要な情報を迅速かつ的確に把握し、災害から自らを守るために安全な場所に避難するなどの災害時の一連の行動をとるのに支援を要する人々をいい、一般的に高齢者、障がい者、外国人、乳幼児、妊婦等が挙げられている。

消防庁では、都道府県や市町村に対して、人命の安全の確保を最重点とする風水害対策の実施、避難勧告等の判断・伝達マニュアルの作成、災害時要援護者の避難支援対策の推進、避難路や避難所の安全性の確保や地域住民への周知徹底など、迅速かつ安全な避難が行われるための取組の推進について、毎年、特に風水害の発生が多くなる出水期(梅雨期や台風到来期)を前に呼びかけを行っている。また、大雨による土砂災害の発生や、中小河川の急激な増水、地下空間の浸水による災害が発生していることに鑑み、こうした事例に対しても注意を喚起しているほか、実践的な防災訓練の実施、防災知識の普及啓発について要請している(平成23年5月27日付消防災第191号「風水害対策の強化について(通知)」(参照URL:http://www.fdma.go.jp/concern/law/tuchi2305/pdf/230527_sai191.pdf)など)。
平成23年度については、6月1日に開催した各都道府県の防災主管課長及び関係府省等を集めた会議の中で、風水害対策に万全を期すよう要請した。

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しかしながら、平成23年9月の台風第12号及び第15号による災害では、一部の市区町村で避難勧告等の発令が夜間になった事例、比較的安全と思われる場所に避難していて被害にあった事例、及び災害に伴う停電等により住民への情報伝達手段が途絶えた事例などが発生した。このような状況を踏まえ、消防庁では、各市区町村における避難勧告等の発令基準、避難場所や避難所の安全性、防災行政無線の設置場所について、早急な点検等の実施を要請した(平成23年10月4日付消防災第319号「避難勧告等の発令基準等に係る点検等について」)。

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