平成23年版 消防白書

4 防災体制の整備の課題

(1) 地方防災会議の一層の活用

地方防災会議は、防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。
今後は、その更なる活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。

(2) 地域防災計画の見直しの推進

地域防災計画については、各地方公共団体の自然的、社会的条件等を十分勘案し、地域の実情に即したものとするとともに、具体的かつ実践的な計画となるよう適宜見直しに取り組むことが求められる。
具体的には、地域防災計画の見直しに当たっては、被害想定、職員の動員配備体制、情報の収集・伝達体制、応援体制、被災者の収容・物資等の調達、防災に配慮した地域づくりの推進、消防団・自主防災組織の充実強化、災害ボランティアの活動環境の整備、災害時要援護者対策、防災訓練などの項目に留意する必要がある。
特に大きな災害が発生した後、その災害の教訓を踏まえた地域防災計画の全体の見直しが必要であるため、消防庁では、都道府県・市町村の策定・見直しを支援する観点から、地域防災計画の策定・見直しに当たっての留意点などをまとめた検討報告書を作成しているところであり、今回の東日本大震災を踏まえ、平成23年6月に「地域防災計画における地震・津波対策の充実・強化に関する検討会」を開催し、年内をめどに検討会報告書を取りまとめることとしている。

(3) 実効ある防災体制の確保

地域防災計画は、より具体的で内容が充実し、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害発生時に、これらが実際に機能し、又は定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであり、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。
そのため、組織に関しては、危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制が望ましいと考えられる。平成23年4月1日現在、46都道府県において部次長職以上の防災・危機管理専門職が設けられている。

(4) 避難勧告等の判断・伝達マニュアル策定及び災害時要援護者の避難対策の推進

ア 避難勧告等の判断・伝達マニュアル策定の推進

避難勧告等の適切な発令の促進のため、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」(平成17年3月)が取りまとめられている。ガイドラインでは、避難すべき区域・避難勧告等の発令の判断基準を含めたマニュアル策定の進め方や、避難勧告等の伝達手段の整備・伝達内容について注意すべき事項を明記している。
各市町村においては、このガイドラインを参考にマニュアルを策定し、又は既に策定したマニュアルの見直しを行うことが必要である。

イ 災害時要援護者の避難対策の推進

高齢者等の災害時要援護者の避難支援などについては、「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」が平成17年3月に取りまとめられ、平成18年3月の改訂を経て、現在に至っている。
平成20年4月に中央防災会議で報告された「自然災害における『犠牲者ゼロ』を目指すための総合プラン」に基づき、政府として市町村に対して、平成21年度までを目途に、ガイドライン等を参考に、災害時要援護者の避難支援の取組方針等(全体計画)が策定されるよう働きかけてきたところであるが、市町村においては、「全体計画」にとどまらず、「災害時要援護者名簿」や「個別計画」の早急な策定が求められる。

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