平成23年版 消防白書

3 情報処理システムの活用

(1) 防災情報システムの整備

消防庁では、震度情報や緊急消防援助隊派遣時などの広域応援に対応するための防災情報等について、防災情報のデータベース化と国・地方公共団体間をネットワーク化した、防災情報システムの整備を推進している。
大規模災害発生時の災害応急活動においては、広域的な対応が重視され、より迅速な情報の収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での判断が不可欠となる。
全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年(1997年)4月から運用を開始しており、本システムで収集された震度データは、緊急消防援助隊の派遣等、広域応援活動に活用するとともに、気象庁にも提供され震度情報として発表されている。

(2) 災害対応支援システムの導入と活用

消防庁では、災害発生時に正確かつ迅速な状況判断の下に的確な応急活動を遂行する必要がある。そのため、災害発生時は、シミュレーションにより被害を推測することができ、かつ、平時には円滑な災害対応訓練に活用できるシステムを導入することが有効であることから、地震被害予測システム等の開発・普及に努めている。
特に、消防研究センターで開発した「簡易型地震被害想定システム」(第2-9-4図)は、地震発生時に自動的に被害を推計することが可能であり、迅速な状況判断、初動措置の確保、日常の指揮訓練等に役立つシステムである。

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消防庁では、当該システムによる被害推定結果を全都道府県等にメール配信するなど活用を図っている。
地震直後の自動推計においては、気象庁から公開される点震源を用いていることから、本システムは東日本大震災のような一定規模を超えた巨大地震への適用には限界を有している。
広い範囲の断層の破壊現象によって引き起こされる巨大地震に対応するために、震度情報や線震源モデルなどを活用し、地震発生直後においても精度の高い被害推計が可能なシステムへの改良について検討を行っている。

(3) 各種統計報告オンライン処理システム

行政事務の情報化に対応し、統計事務の効率化・迅速化を図るため、平成14年度からIP-VPNを活用した、次に掲げる各種統計報告のオンライン処理を可能とするシステムの開発を行っており、平成15年度から順次運用を開始している。
・火災報告等オンライン処理システム
・防火対象物実態調査等オンライン処理システム
・ウツタイン様式調査オンライン処理システム
・「危険物規制事務調査」及び「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告」オンライン処理システム
・救急救助調査オンライン処理システム
・石油コンビナート等実態調査オンライン処理システム
・消防防災・震災対策等現況調査オンライン処理システム
消防庁では、これらのデータを迅速的確に収集・整理することにより、各都道府県、各消防本部への速やかな情報提供、各種施策への反映を支援している。
なお、平成20年度からは、消防庁と各都道府県、市町村及び消防本部との間の接続方式をIP-VPNからSSL(Secure Sockets Layer:WEBブラウザとWEBサーバ間で情報を暗号化して通信する方式)に変更し、セキュリティの強化を図ったところである。
また、これらのオンライン処理システムについては、消防防災業務の業務・システム最適化計画に基づき、平成24年1月から統合された次期統計調査系システムとしての効率的な運用を目指し、整備を進めている。

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