平成23年版 消防白書

第5節 その他の被害

1 帰宅困難者*1

*1 「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会第1回(平成23年9月20日)及び第2回(平成23年11月22日)」資料により作成。

東日本大震災では、震災の影響で交通機関が不通となったために通常の交通手段によって帰宅することのできない、いわゆる「帰宅困難者」が多数発生した。
東京圏の鉄道各線で、広範囲にわたる線路点検や復旧作業が行われたのをはじめとして、公共交通機関が運行停止したことなどから、当日中に帰宅できなかった帰宅困難者が首都圏全体で515万人発生したと推計されている。これに対処するため、国、都県、区市等は行政庁舎や公共施設等を帰宅困難者のための一時滞在施設(一時受入施設)として開放したほか、多くの民間施設等においても帰宅困難者の受け入れが行われた。

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2 計画停電

(1) 東日本大震災発生後からの経緯*2

*2 経済産業省ホームページにより作成。

東日本大震災によって、太平洋側の火力発電所等を中心に甚大な設備被害が発生したことに加え、原子力発電所が安全確保のための停止を継続したため、東京電力(株)の供給能力は、約2,100万kwが欠落(約5,200万kwから約3,100万kwへ約4割減)し、大幅な供給力不足が発生した。
こうした未曽有の供給力不足に対する方策として、東京電力(株)は、ピーク時における電力の需給バランスを適切に保ち、予測不能な大規模停電を回避するため、系統の変電所に則した需要のかたまり毎に順次停電させる「計画停電*3」による対応を3月13日に決定し、3月14日17時から初めて実行され、その後も電気需要を踏まえつつ、3月15日~18日、22日~25日、28日に随時実施した。これに続き、東北電力も3月15日に「計画停電」の実施を決定したが、実行されなかった。

*3 電力需要が電力供給能力を上回ることによる大規模停電を避けるため、電力会社により一定地域ごとに電力供給を順次停止又は再開させること。

(2) 消防庁の対応

消防庁では、計画停電実施前に、計画停電が実施された時の留意事項として関係都県消防防災主管課を通じて市町村あて及び東京消防庁・関係指定都市消防本部あてに「東京電力の需給逼迫による計画停電の実施について」(平成23年3月14日事務連絡)、「東京電力の需給逼迫による計画停電の実施に伴う防火対策の徹底について」(平成23年3月14日事務連絡)及び「東京電力の需給逼迫による計画停電の実施に伴う注意喚起」(平成23年3月14日事務連絡)等を発出し、119番通報体制の確保や防火対策の徹底に関する事業所への周知等について通知した。

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