平成23年版 消防白書

第5節 情報通信体制の強化

東日本大震災において、防災行政無線は住民への津波警報等の情報伝達に大きな役割を担った。しかし、地震や津波による被害が甚大な地域では、地震動や襲来した津波による倒壊・破損、長期間にわたった停電の影響によるバッテリー切れ等のために、その機能が失われ、津波警報等の確実な伝達や、避難者等への情報連絡等に支障が生じた事例も生じた。
災害時における住民への確実な情報伝達体制を確保するため、防災行政無線について、整備率の一層の向上を図るとともに、デジタル化等の高度化、避難所となる各種公共施設における情報伝達手段の確保、無線施設の非常電源の容量確保、耐震性の向上や津波の影響を受けない場所への移設などを進める必要がある。同時に、住民への伝達手段の多様化の観点から、コミュニティFM、エリアメール、衛星携帯電話等の多様な伝達手段の確保の検討について進めていく必要がある。
消防救急無線については、固定電話や携帯電話が被害を受けた状況にあっても、消防機関の自営の通信網として大きな役割を担った。しかし、地震や津波による被害が甚大な地域では、同時に複数の事案への対応が発生したことによる無線の輻輳の発生、津波等によって、有線回線が被災したことによる通信機能の障害等の問題が発生した。
このため、輻輳の緩和やデータ通信、秘匿性の向上による利用高度化の観点から、消防救急無線のデジタル化を推進するとともに、大規模災害時における適切な無線統制体制の構築や衛星通信等の消防救急無線が使用できない場合の代替手段についても検討しておくことが必要である。
また、J-ALERTについては、震災時、整備が完了していた自治体において、住民への速やかな伝達手段として活用されたが、庁舎の被災や停電等の影響により、機器が正常に動作しなかった事例もあり、情報伝達ルートの多重化も含めシステム全体のバックアップを構築する必要がある。

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