平成24年版 消防白書

第6節 風水害対策

[風水害の現況と最近の動向]

(1) 平成23年中の主な災害

平成23年中の風水害による人的被害、住家被害は、死者・行方不明者136人(前年31人)、負傷者818人(同248人)、全壊505棟(同66棟)、半壊5,986棟(同591棟)、一部破損5,334棟(同1,545棟)等となっている(第1-6-1図)。

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また、平成23年中に発生した台風の数は21個と平年の25.6個(昭和56年から平成22年までの30年間平均)と比較すると少なく、日本列島への上陸数は3個(平均2.7個)で平年並みであった。
平成23年中の主な災害として、7月27日から30日にかけて、前線が朝鮮半島から北陸地方を通って関東の東に停滞したことから、新潟県と福島県を中心に記録的な大雨となり、局地的に1時間100ミリを超える猛烈な雨による浸水被害等がもたらされた。
さらに、8月下旬から9月中旬にかけて、台風第12号及び第15号が日本列島に上陸し、それぞれ西日本から北日本にかけての広い範囲で暴風や記録的な大雨となり、浸水被害や土砂災害により大きな被害がもたらされた。

(2) 平成24年1月から9月までの主な災害

5月6日は、日本の上空約5,500メートルに氷点下21度以下の強い寒気が流れ込む等の気象条件により、東海地方から東北地方にかけて大気の状態が非常に不安定となった。そのため、落雷や突風、降ひょうを伴う発達した積乱雲が発生し、茨城県及び栃木県等において竜巻が発生した。
発生した竜巻の強さを藤田スケール*1で表すと、それぞれ、茨城県つくば市付近でF3(風速が毎秒70~92メートル)、栃木県真岡市から茨城県常陸大宮市にかけての地域ではF1~F2(風速が毎秒33~69メートル)、茨城県筑西市付近ではF1(風速が毎秒33~49メートル)と推定されている。

*1 竜巻やダウンバーストなどの風速を、構造物などの被害調査から簡便に推定するため、シカゴ大学の藤田哲也などにより考案された風速スケールであり、F0~F5の6段階で区分されている。

これらの突風等に伴う人的被害、住家被害は、死者3人、負傷者59人、全壊89棟、半壊197棟、一部破損978棟等となっている(第1-6-2表、平成24年6月13日現在)。

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6月13日21時にフィリピンの東海上で発生した台風第4号は、西へ進んだ後北北西に向きを変え、18日には沖縄の南東海上を北東へ進んだ。その後、速度を速めながら種子島の南東海上から四国の南へと進み、19日17時過ぎに、和歌山県南部に上陸し、同日20時過ぎに愛知県東部に再上陸した。この台風と梅雨前線により、沖縄地方から東北地方にかけての広い範囲で大雨となったほか、台風の進路に沿って、沖縄地方から東北地方にかけての広い範囲で暴風、高波、高潮となった。
この台風に伴う人的被害、住家被害は、死者1人、負傷者79人、全壊1棟、半壊1棟、一部破損115棟等となっている(第1-6-2表、平成24年8月10日現在)。

7月11日から14日にかけて、本州付近に停滞した梅雨前線に向かって南から湿った空気が流れ込み、西日本から東日本にかけての広い範囲で大雨となった。特に九州北部地方では断続的に雷を伴って非常に激しい雨が降った。
気象庁によると、同期間の総降水量は、福岡県八女市黒木で649.0ミリ、熊本県阿蘇市阿蘇乙姫で816.5ミリ、大分県日田市日田で462.0ミリ、佐賀県佐賀市川副で375.0ミリとなるなど、福岡県、熊本県、大分県、佐賀県の計20地点で7月の月平年値を超える降水量を観測した。また、上記4地点を含む計7地点で72時間降水量が観測開始以降最も高い値となった。そのほか、1時間降水量で計4地点、3時間降水量で計7地点、24時間降水量で計8地点が、それぞれ観測開始以降最も高い値となった。この大雨に対しては、気象情報の中で、「これまでに経験したことのないような大雨」というキーワードが初めて用いられ、一層の警戒が呼びかけられた。
主な消防活動として、12日8時55分阿蘇広域消防本部から消防相互応援協定に基づく応援が要請され、16日までの5日間、熊本県内11消防本部の延べ116隊440人が倒壊家屋、土砂、瓦礫の排除や救出救助活動を実施した(12日から13日は24時間体制)。また、福岡県においても14日7時49分、八女消防本部から消防相互応援協定に基づく応援が要請され、17消防本部28隊121人が救助活動等を実施した。
さらに、12日に熊本県から、14日には福岡県から、それぞれ消防庁長官へ大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要領に基づく応援の求めがあり、熊本県には福岡市消防ヘリ、長崎県消防防災ヘリ、山口県消防防災ヘリ及び愛媛県消防防災ヘリの出動を要請、福岡県には島根県消防防災ヘリ、長崎県消防防災ヘリ、宮崎県消防防災ヘリ及び京都市消防ヘリの出動要請を行い、それぞれ情報収集、捜索及び救助活動を実施した。
なお、この大雨に伴う人的被害、物的被害は、死者・行方不明者32人、負傷者27人、全壊363棟、半壊1,500棟、一部破損313棟等となっている(第1-6-2表、平成24年8月10日現在)。

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