第I部 東日本大震災を踏まえた課題への対応
平成23年3月11日に発生した東日本大震災による被害は、死者・行方不明者約2万人の人的被害、全壊約13万棟、半壊約25万棟の住家被害など、まさに戦後最大の規模となった。
この大災害を受け、消防庁長官の諮問機関である第26次の消防審議会に対し、「広範な地域に甚大な被害を及ぼす大規模災害に対応するため、東日本大震災を踏まえた今後の消防防災体制のあり方について意見を示されたい」との諮問がなされ、平成23年6月から5回にわたり集中的に審議が行われた。審議等を踏まえ、平成24年1月30日に、消防審議会会長(吉井博明東京経済大学コミュニケーション学部教授)から消防庁長官に対し、今後の対応について取りまとめた「東日本大震災を踏まえた今後の消防防災体制のあり方に関する答申」(以下、「消防審議会答申」という。)が行われた。
消防審議会答申においては、東日本大震災における被害の甚大さ、我が国における少子高齢化等の社会情勢等を踏まえ、今後発生が懸念されている東海地震、東南海地震、南海地震が連動して発生する、いわゆる三連動地震や首都直下地震などの大規模地震に対する備えとして、住民自らが「自分の命は自分で守る」という意識を持って取り組む「自助」、自主防災組織・ボランティア等が互いに力を合わせて助け合う「共助」、国及び地方公共団体が行う「公助」それぞれの充実・強化を図ることが重要であると謳われている。この考えを前提として、地震・津波対策や地域総合防災力、消防本部や消防団の活動、緊急消防援助隊による広域応援体制、民間事業者における対策について、東日本大震災における被害や活動等を踏まえ、更なる充実・強化を目指すための対処方針が示されている。
消防庁では、この消防審議会答申の内容を踏まえて、地域防災計画の見直しに対する支援、災害情報伝達手段の多重化・多様化、消防職団員の安全対策の強化、緊急消防援助隊の充実・強化、統括防火管理制度及び統括防災管理制度の整備を内容とする消防法の改正等、ハード・ソフトの両面から、より一層の消防防災体制の強化に取り組んでいる。
また、震災により消防防災施設・設備が大きな被害を受けたことを踏まえ、平成23年度に引き続き、平成24年度当初予算において、143億円の予算措置*を講じ、消防防災施設・設備の早期復旧の支援を行っている
(附属資料Iー3、附属資料Iー4)。