平成24年版 消防白書

3.防災知識の普及啓発

我が国は繰り返し地震や風水害等による災害に見舞われており、こうした災害は日本のどこでも発生する可能性がある。災害による被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進するとともに、国民一人ひとりが、避難、救助、応急救護、出火防止、初期消火等の防災に関する知識や技術を身に付け、日ごろから家庭での水・食料等の備蓄、家具の転倒防止、早めの避難等の自主防災を心がけることが極めて重要である。また、防災のための講習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していくことが災害時の被害軽減につながる。
このため、政府は、大正12年(1923年)に関東大震災が発生した9月1日を「防災の日」、毎年8月30日から9月5日までを「防災週間」と定め、また平成7年(1995年)に阪神・淡路大震災が発生した1月17日を「防災とボランティアの日」、毎年1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。「防災週間」では政府や地方公共団体から地域の自主防災組織に至るまで大小様々な規模で防災訓練等を中心とした行事が行われ、「防災とボランティア週間」では、全国各地で防災写真展や防災講習会、消火・救助等の防災訓練等の事業が実施されている。また、「津波対策の推進に関する法律」では11月5日を「津波防災の日」(1854年に発生した安政南海地震での「稲むらの火」の逸話にちなんだもの)とされたところであり、中央防災会議「防災対策推進検討会議」最終報告では、3月11日を、東日本大震災に思いを致し、そこから得た教訓を後世に伝承し、訓練、啓発行事等を実施するための日と定めることを検討する必要があるとされたところである。これも含めて、防災意識の高揚を図っていく必要がある。
消防庁においては、インターネット等の広報媒体を通した防災知識の普及啓発を行うとともに、地方公共団体では、各種啓発行事の実施、自主防災組織の育成などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。
また、消防庁では、地方公共団体において実施される一般向けの防災研修を支援することを目的として、講師となる地方公共団体職員向けの「防災研修カリキュラム・講師支援教材」を作成した(参照URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h20/2007/200717-1houdou_z.pdf)。この中では、受講者の興味を引きやすく、理解を促すための基本的なカリキュラムについて例示するとともに、研修に活用することを想定した教材、資料作成に活用できる写真素材などを掲載している。
さらに消防庁では、小中学生や自主防災組織などの地域住民に対して消防・防災に関する知識、応急救護や初期消火、災害図上訓練など防災に関する実技を伝えるための指導者用防災教材「チャレンジ!防災48」を作成し全国に配布するとともに、インターネット上に公開した。(参照URL:http://www.e-college.fdma.go.jp/bosai/index.html)教材には災害に関する映像・写真を豊富に収録しており、研修や防災啓発に幅広く利用して頂くことを想定している。また、消防庁では、教材活用に当たってのポイントや、実際に教材を活用して防災教育を実施した事例を紹介する「チャレンジ!防災48活用事例集」(参照URL:http://www.e-college.fdma.go.jp/bosai/bousai48.pdf)を作成し、活用の促進を図っている。

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