平成24年版 消防白書

[災害に強い安全なまちづくり]

1.防災基盤等の整備

(1) 公共施設等の耐震化

消防庁では、地震等の大規模な災害が発生した場合においても、災害対策の拠点となる施設等の安全性を確保し、もって被害の軽減及び住民の安全を確保できるよう防災機能の向上を図るため、「災害に強い安全なまちづくり」の一環として、公共施設等耐震化事業により、
〔1〕 避難所となる公共・公用施設(学校や体育館など)
〔2〕 災害対策の拠点となる公共・公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など)
〔3〕 不特定多数の住民が利用する公共施設等(文化・スポーツ施設、道路橋りょう、交通安全施設、福祉施設等)
の耐震化を推進している。
なお、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査報告書」(平成24年11月)によると、地方公共団体が所有している公共施設等のうち、災害応急対策を実施するに当たり、平成23年度末時点で地方公共団体が所有又は管理している防災拠点となる公共施設等の191,042棟のうち151,506棟(79.3%)の耐震性が確保されている(第4-3図)。

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消防庁では、地方公共団体が公共施設の耐震化を進める上での参考となる資料として平成17年度に「防災拠点となる公共施設の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、すべての地方公共団体へ配付するとともに、消防庁ホームページ(参照URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/taishin/index-j.html)において公表している。
さらに、初動対応の要となる都道府県・市町村庁舎等の耐震率の向上や家具転倒防止等自主防災の推進などに取り組んでいる。

(2) 防災施設等の整備

災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防防災施設整備費補助金や防災基盤整備事業等により、防災施設等の整備を促進している。
東日本大震災では、市町村の災害対策本部機能の喪失又は著しい低下等が見られたことから、消防庁では、非常用電源の整備、多様な手段による速やかな被害情報収集手段の確保を地方公共団体に要請した。

(3) 震度情報ネットワークの整備

阪神・淡路大震災を契機に、迅速かつ適切な初動体制・広域応援体制の確立に資するため、「1市区町村1観測点」を原則として整備された震度情報ネットワークは、平成7年(1995年)度の整備から10年以上が経過し、更新時期を迎えるとともに、その具体的な配置基準も課題となった。このため、消防庁では気象庁と合同で「震度に関する検討会」を平成20年度に開催し、震度計の具体的な配置基準や設置環境等について検討を行い、地方公共団体に示すとともに、震度情報ネットワークの更新・整備について、平成21年度には、補正予算により「防災情報通信設備整備事業交付金」を創設し、各都道府県に対し全額国費による財政的な支援を行った。

(4) 防災拠点の整備

大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点を確保することは非常に重要であり、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。
このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場等となり、災害時には、防災活動のベースキャンプや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要である。消防庁では、防災基盤整備事業等により地方公共団体における防災拠点の整備を促進している。

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