平成26年版 消防白書

2.広域応援・空中消火による消防活動

(1) 広域応援・空中消火体制の整備

林野火災は、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等に被害が及ぶことや市町村境、隣接都府県境を越えて拡大することもある。
消防庁では、都道府県や消防機関に対し、林野火災が発生した場合、十分な消防力を迅速に投入するとともに、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進め、必要に応じて早期に広域応援の要請を行うよう要請している。

(2) 空中消火の実施状況

ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊ヘリコプターにより実施されている。過去10年間の空中消火の実施状況は、第1-4-1図のとおりとなっている。

1-4-1a.gif

林野火災の消火活動には早期消火・延焼拡大防止の観点により迅速な応急対応や資源の集中的投入が求められることから、平成26年5月に都道府県や消防機関に対し通知を発出し、以下のような取組を要請した(平成26年5月16日付消防特第90号、消防広第117号「林野火災に対する空中消火の積極的な活用について(通知)」)。
〔1〕 消防本部は林野火災を覚知した場合は、当該都道府県内の消防防災航空隊に第一報を入れ情報共有を行い、ヘリコプターの早期出動に備えること。
〔2〕 延焼危険性、活動困難性、人命危険性等からヘリコプターによる空中消火活動が必要と判断した場合は、速やかに当該都道府県内の消防防災ヘリコプターを要請するとともに、火災規模等に応じて消防組織法第39条に基づく消防相互応援協定、さらに同法第44条に基づく大規模特殊災害時における広域航空消防応援によりヘリコプターの要請を求めること。
〔3〕 当該都道府県内の消防防災航空隊は林野火災の発生の第一報を受けた後、自衛隊に対して適宜情報提供を行う等、緊密な連携を図り、当該市町村長は消防防災ヘリコプターだけでは消火が困難と見込まれる段階で時機を逸することなく、自衛隊ヘリコプターの派遣要請を都道府県知事に求めること。

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