はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~
平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、死者・行方不明者が約2万名、住家における全壊が約13万棟、半壊が約27万棟に被害が及び、それは戦後最大の自然災害の脅威とも呼べるものであった(1表)。
被災地の消防職団員は、地震発生直後から、自らの身の危険を顧みることなく避難誘導や防御活動に従事するなどして、津波によって300名近くにのぼる消防職団員が命を失った(2表)。また、消防職団員自らも被災者でありながら、献身的に消防活動に当たり、多くの命を救った。
全国の消防からは、地震発生後直ちに緊急消防援助隊が駆けつけ、被災地において約3万人が活動し、地元の消防本部等と協力し、約5,000名の救助を行うとともに、事故を起こした福島第一原子力発電所3号機に対する放水活動や、大規模コンビナート火災に対する消火活動など、様々な場面で活躍し、被災地の住民に大きな安心を与えるという役割を果たした(1図)。
一方で、東日本大震災は、消防行政に多くの教訓を残した。
平成23年6月に発足した第26次消防審議会では、平成24年1月30日に「東日本大震災を踏まえた今後の消防防災体制のあり方に関する答申」(2図)が、また平成25年6月11日に「東日本大震災をはじめとした大規模・多様化する災害等への消防の広域的な対応のあり方に関する答申」(3図)が行われた。これらの答申においては、南海トラフ地震や首都直下地震といった従来想定していた規模を超える震災に対応するための緊急消防援助隊をはじめとした広域応援体制のあり方や、予防・救急等個別分野における広域的な対応、大規模・多様化する災害(豪雪・火山災害等)に対する消防機関の対応等について提言されている。
また、その他に大規模災害時の初動活動や、消火、救急、救助、消防団の安全対策などそれぞれの個別の分野で東日本大震災の教訓を踏まえ、今後の対応について様々な検討が行われた。
さらに、近年では、多くの被害が生じる大規模な風水害や火山災害、多数の犠牲者が発生した火災事故も全国各地で起きており、これらの災害も踏まえて、国土強靱化に資する取組の推進が求められている。
今後、消防庁としては、東日本大震災を含めた自然災害や火災事故における教訓をもとに、隊数の大幅増隊や車両の整備等による緊急消防援助隊の機能強化(特集1参照)、消防団員の加入促進や消防団の装備の充実強化を通した地域の防災力の充実強化(特集2参照)、地方公共団体の危機管理体制及び訓練の充実、災害リスク情報の的確な提供の推進、有床診療所・病院火災対策の推進、石油コンビナート等における災害対策の推進(以上、特集3参照)など、消防防災体制の充実強化に努め、国民の命を守る消防防災行政を進めていくこととしている。