平成26年版 消防白書

第2節 北朝鮮ミサイル発射事案への対応について

平成24年12月12日、北朝鮮北西部沿岸地域の東倉里(トンチャンリ)地区から、南の方角へミサイル1が発射され、北朝鮮は発射後、「人工地球衛星」を地球周回軌道に進入させることに成功した旨を発表した。
また、平成26年3月3日、26日、6月29日、7月9日、13日及び26日と、日本海に向けてミサイルが発射された。朝鮮半島情勢をはじめとし、我が国周辺においては依然として不安定、不透明な状況が継続しており、今後もミサイル発射を含む動向を注視していく必要がある。

(1) 事前通報が為されたミサイル発射事案

ア 北朝鮮による事前通報

平成24年12月3日夜、国際海事機関(IMO)から、我が国を含むIMO加盟国に対し、北朝鮮当局から「地球観測衛星」(光明星(カンミョンソン)3号2号機)の打ち上げのための事前通報があった。また、12月10日夜、国際海事機関(IMO)から、打ち上げのための事前通報の改定情報があった旨の連絡があった。

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イ 消防庁の主な対応

平成24年12月1日、北朝鮮による人工衛星打ち上げ発表を受け、消防庁では、消防庁情報連絡室を設置し、関係機関及び地方公共団体と連絡体制を強化するとともに、各都道府県に対しても、必要な連絡体制を確保するよう要請した。
12月3日及び4日には、ミサイル発射の事実に関する情報の伝達体制、都道府県及び市町村における防災・危機管理体制の確認及び消防機関における態勢等について周知するとともに、落下物への基本的な対応要領等について伝達し、不測の事態に備えるなど、国民の安心・安全の確保に万全を期した。
12月5日には、内閣官房及び防衛省とともに対応要領について、飛翔経路下となっていた沖縄県及び沖縄県内の全市町村を対象とした地元説明会を実施するとともに、全国の都道府県に対する同様の説明会を実施した。
また、政府としてミサイル発射事案に関し、Jアラートを使用する考えが示されたことから、12月5日にJアラートの第3回再訓練を前倒しして実施した。これにより、9月12日に実施した全国一斉自動放送等訓練及び一連の再訓練(全3回)をとおして、沖縄県内すべての市町村における緊急情報の伝達体制が整っていることを再確認し、地方公共団体及び住民への情報伝達体制について万全を図った。
12月9日には、官邸対策室が13時に設置されたのに併せて、国民保護・防災部長を長とする消防庁情報連絡室に体制を移行し、消防庁内においても対応人員を増強するとともに、消防庁職員2名を沖縄県庁へ派遣し、沖縄県との情報連絡体制を強化した。
12月12日9時49分頃、北朝鮮から「人工衛星」と称するミサイルが発射されたため、地方公共団体への情報提供を行うとともに、通過区域の沖縄県(市町村・消防本部)に落下物情報及び被害情報を確認し、我が国への被害が無いことを確認した。
ノータム及び航行警報が解除されたことを踏まえ、12月13日13時00分、消防庁に設置していた情報連絡室を閉鎖した(第3-2-1表)。

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ウ 沖縄県内におけるJアラートの活用状況

Jアラートは、ミサイルが沖縄地方の上空を通過する約6分前にミサイル発射情報、ミサイルが沖縄地方の上空を通過直後にミサイル通過情報を全国のJアラート運用団体へ伝達した。
沖縄県内の各市町村では、Jアラート等で受信した情報を防災行政無線や緊急速報メール等の様々な情報伝達手段を用いて住民へ即座に伝達した。
平成24年9月に実施した全国一斉自動放送等訓練や各地方公共団体における住民への情報伝達体制の確認の徹底を行った効果もあり、Jアラートによる住民への情報伝達システムについては、全体として概ね順調に機能したものと考えられる。
ただし、手動対応の小規模団体の一部(2団体)において、ミサイル発射情報等について市町村防災行政無線(同報系)の放送等がなされない事例があった。
それ以外の団体(先島諸島の全市町村(石垣市、宮古島市、多良間村、竹富町及び与那国町)を含む。)においては、住民への情報伝達が行われた。

(2) 事前通報がないミサイル発射事案

平成26年3月3日、26日、6月29日、7月9日、13日及び26日と、日本海に向けてミサイルが発射された。消防庁においては、関係省庁局長級会議に参加し、ミサイル発射の事実等について、地方公共団体への情報提供を行うなど、国民の安心・安全の確保に万全を期した。

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