平成28年版 消防白書

2.火災による死者の状況

(1) 火災による死者の状況

平成27年中の「火災による死者数」は1,563人で、そのうち放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)を除いた死者数は1,204人と前年1,262人に比べ58人(4.6%)減少しており、1,546人を記録した平成17年以降減少傾向となっている。また、負傷者数は6,309人と前年(6,560人)に比べ251人(3.8%)減少しており、8,850人を記録した平成17年以降減少傾向となっている(第1-1-3図)。

第1-1-3図 火災による死者数の推移

ア 1日当たりの火災による死者数は4.3人

平成27年中の1日当たりの火災による死者数は4.3人となっている(第1-1-2表)。

イ 火災による死者数は、人口10万人当たり1.2人

火災による死者の状況を都道府県別にみると、東京都が99人で最も多く、次いで神奈川県が90人、千葉県が87人となっている。一方、死者が最も少ないのは、佐賀県で5人となっている。
人口10万人当たりの火災による死者数で比較すると、最も多いのは秋田県が3.8人、最も少ないのは沖縄県が0.6人となっている。また、全国平均では1.2人となっている(第1-1-8表)。

第1-1-8表 都道府県別の火災による死者の状況

ウ 火災による死者は1月から3月に多く発生

平成27年中の火災による死者発生状況を月別にみると、火気を使用する機会が多い1月から3月までの平均は月に191.7人(年間の月平均は130.3人)に上っており、この3か月間に年間の火災による死者数の36.8%に当たる575人の死者が発生している(第1-1-4図、附属資料13)。

第1-1-4図 月別の火災による死者発生状況

エ 23時から翌朝5時までの時間帯の火災で多くの死者が発生

平成27年中の火災100件当たりの死者発生状況を時間帯別にみると、23時から翌朝5時までの時間帯で多くなっており、同時間帯の火災100件当たりの死者数の平均は7.9人と、全時間帯の平均4.0人の約2倍となっている(第1-1-5図、附属資料14)。

第1-1-5図 時間帯別火災100件当たりの死者発生状況

オ 死因は一酸化炭素中毒・窒息、次いで火傷が多い

平成27年中の火災による死因は、一酸化炭素中毒・窒息が501人(32.1%)と最も多く、次いで火傷が487人(31.2%)となっている(第1-1-9表)。

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カ 逃げ遅れによる死者が49.1%

死亡に至った経過をみると、平成27年中の火災による死者数(放火自殺者等を除く。)1,204人のうち、逃げ遅れが591人で49.1%を占めている。その中でも「避難行動を起こしているが逃げ切れなかったと思われるもの。(一応自力避難したが、避難中、火傷、ガス吸引により、病院等で死亡した場合を含む。)」が212人と最も多く、全体の17.6%を占めている(第1-1-6図、附属資料15)。

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キ 高齢者の死者が779人で64.7%

火災による死者数(放火自殺者等を除く。)を年齢別にみると、65歳以上の高齢者が779人で64.7%を占めており、特に81歳以上が331人(27.5%)と多くなっている(第1-1-7図、附属資料16)。

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また、年齢階層別の人口10万人当たりの死者数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では3.8人と、全年齢層における平均1.0人の3.8倍となっている。

ク 放火自殺者等は、火災による死者の23.0%

平成27年中の放火自殺者等は359人となっており、これは、火災による死者の総数(1,563人)の23.0%(前年24.8%)を占めている(第1-1-3図)。
また、年齢別・性別にみると、特に男性の61歳~65歳の階層が28人と最も多く、次いで66歳~70歳の階層が27人となっている(第1-1-8図、附属資料16)。

第1-1-8図 年齢別・性別放火自殺者等発生状況

(2) 建物火災による死者の状況

ア 建物火災による死者は、死者総数の78.1%で最多

平成27年中の建物火災による死者数は1,220人で、火災による死者の78.1%を占めている。
また、建物火災による負傷者は5,400人で、火災による負傷者の85.6%を占めており、火災による死傷者の多くが建物火災により発生している(第1-1-10表)。

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イ 建物火災のうち、全焼による死者は734人で最多

平成27年中の建物火災による死者1,220人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が734人で60.2%を占めている(第1-1-9図、附属資料18)。

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ウ 建物火災による死者の83.6%が住宅で発生

平成27年中の建物火災による死者1,220人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下本節において、ことわりのない限り同じ。)での死者が1,020人で、建物火災による死者の83.6%を占めている(第1-1-10図、附属資料22)。

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また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息による死者が487人(39.9%)で最も多く、次いで、火傷が412人(33.8%)となっている(第1-1-11図、附属資料19)。

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(3) 住宅火災による死者の状況

ア 住宅用火災警報器の普及とともに住宅火災の死者は減少

平成16年の消防法改正により設置が義務付けられた住宅用火災警報器の設置率は、平成28年6月1日時点で全国で81.2%となっている(第1-1-26表)。
こうした中、平成27年中の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)は914人と、前年(1,006人)と比較して92人(9.1%)減少し、1,220人を記録した平成17年と比較すると306人(25.1%)の減少となっている。
また、65歳以上の高齢者は611人で、前年と比較し88人(12.6%)減少したものの、住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)の66.8%を占めている(第1-1-12図)。

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イ 死者発生数は高齢者層で著しく高い

平成27年中の住宅火災による年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では3.1人と、全年齢階層における平均0.7人の約4.4倍となっている(第1-1-13図)。

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ウ たばこを発火源とした火災による死者が13.7%で最多

平成27年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別(不明を除く。)にみると、たばこによるものが125人(13.7%)で最も多く、次いでストーブ89人(9.7%)、電気器具59人(6.5%)となっている(第1-1-14図)。

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エ 寝具類に着火した火災での死者が多い

平成27年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別(不明を除く。)にみると、寝具類に着火した火災による死者が104人(11.4%)と最も多く、次いで衣類72人(7.9%)、屑類43人(4.7%)となっている(第1-1-15図)。

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オ 2時から6時までの時間帯で多くの死者が発生

平成27年中の住宅火災の死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、2時から6時までの時間帯の平均は103人と全時間帯の平均76.2人の約1.4倍となっている(第1-1-16図、附属資料20)。

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カ 逃げ遅れによる死者が52.2%で最多

平成27年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが477人(52.2%)と最も多くなっている(第1-1-17図)。

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