平成28年版 消防白書

3.比較的小規模な施設に対応した自動消火設備の技術開発の促進

(1) 自動消火設備の技術開発の促進

近年、比較的小規模な高齢者施設や有床診療所において多数の人的被害を伴う火災が相次いだことを受け、自力で避難することが困難な方が入所する高齢者・障がい者施設や避難のために患者の介助が必要な有床診療所・病院については、原則として面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置が義務付けられたところである(既存の施設については設置義務に係る経過措置が設けられている。)。
消防法においては、これらの建築物の構造特性等に鑑み、スプリンクラー設備に代えて、同様の機能を有し設置工事が行いやすいパッケージ型自動消火設備を設置することができることとされている。今後、既存の施設を中心にパッケージ型自動消火設備に対する需要が増加していくことが想定されるが、従来の設備は主として比較的大規模な施設におけるスプリンクラー設備の代替設備として開発されたこともあり、比較的小規模な施設に設置する場合、単位面積当たりの設置費用が割高になる傾向がある。
こうした状況に鑑み、比較的小規模な施設の建物特性に対応した消火性能を有するパッケージ型自動消火設備に係る技術開発の動向を踏まえ、必要な技術上の基準を平成28年1月に策定した。今後も引き続き施設の特性に適したパッケージ型自動消火設備の設置を可能とするための環境整備を進めていく必要がある。

(2) 小規模施設における消防訓練の実効性向上

多数の自力避難困難者が利用する小規模施設では、夜間は昼間に比べて職員数が少なく、火災が発生した場合には、限られた職員等により初期消火や消防機関への通報、自力避難困難者を介助しながらの避難誘導などを行う必要があり、夜間の火災時に適切に対応するための消防訓練を定期的に実施することが特に重要である。
このため、施設の職員等がちゅうちょすることなく火災に対応できるよう、あらかじめ最低限の行動パターンを整理しておくことが重要であり、消防機関への通報を早期に行うとともに、自力避難困難者が建物外への避難に時間を要する場合はバルコニー等の一時的な避難場所へ水平的に避難させることも考慮するなど、個々の施設の状況等に応じた具体的な訓練方法等をマニュアルとして整備し、訓練の実効性向上を図っていく必要がある。

関連リンク

平成28年版 消防白書(PDF)
平成28年版 消防白書(PDF) 平成28年版 消防白書(一式)  はじめに  特集1 熊本地震の被害と対応  特集2 平成28年8月の台風等の被害と対応  特集3 消防団を中核とした地域防災力の充実強化  特集4 消防における女性消防吏員の活躍推進...
はじめに
はじめに 昨年は、気象庁による震度観測開始以降、初めて震度7を観測した平成7年(1995年)の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)から20年に当たる節目の年でした。そして、本年4月14日には、平成16年の新潟県中越地震、平成23年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)に続き、4例目の震度7の地震が熊本...
1.地震の概要
特集1 熊本地震の被害と対応 1.地震の概要 平成28年4月14日21時26分、熊本県熊本地方の深さ11kmを震源として、マグニチュード6.5の地震が発生し、益城町で震度7を観測した(特集1-1表)。 さらに、28時間後の4月16日1時25分、熊本県熊本地方の深さ12kmを震源として、マグニチュード...
2.災害の概要
2.災害の概要 一連の地震により、激しい揺れに見舞われた地域では、多くの建物が倒壊したほか、道路、電気、通信設備等のインフラ施設にも多大な被害が生じた。また、南阿蘇村では、地震の影響により発生した土砂災害によっても、人的被害、住家被害、道路損壊等の甚大な被害が発生した。 さらに、梅雨前線等の影響によ...