平成29年版 消防白書

2.火災による死者の状況

(1)火災による死者の状況

平成28年中の「火災による死者数」は1,452人で、そのうち放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)を除いた死者数は1,114人と前年に比べ減少しており、1,546人を記録した平成17年以降減少傾向となっている。また、負傷者数も5,899人と前年に比べ減少しており、8,850人を記録した平成17年以降減少傾向となっている。また、放火自殺者等は、火災による死者の総数の23.3%を占めている(第1-1-3図)。

第1-1-3図 火災による死傷者数の推移

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第1-1-3図 火災による死傷者数の推移

(備考)「火災報告」により作成

ア 1日当たりの火災による死者数は4.0人

1日当たりの火災による死者数は4.0人となっている(附属資料1-1-9)。
人口10万人当たりの死者数を都道府県別にみると、最も多いのは青森県で2.4人、最も少ないのは沖縄県で0.3人となっている。また、全国平均では1.1人となっている(附属資料1-1-13)。
死者発生状況を月別にみると、火気を使用する機会が多い1月から3月までの3か月間で多くなっている(附属資料1-1-14附属資料1-1-15)。
火災100件当たりの死者発生状況を時間帯別にみると、23時から翌朝7時までの時間帯で多くなっている(附属資料1-1-16附属資料1-1-17)。

イ 死因は火傷、次いで一酸化炭素中毒・窒息が多い

死因は、火傷が最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息となっている(附属資料1-1-18)。
死亡に至った経過をみると、死者数(放火自殺者等を除く。)のうち、逃げ遅れが全体の46.7%を占めている。その中でも「避難行動を起こしているが、逃げ切れなかったと思われるもの。(一応自力避難したが、避難中火傷、ガス吸引し病院等で死亡した場合を含む。)」が最も多く、全体の16.9%を占めている(第1-1-4図、附属資料1-1-19)。

第1-1-4図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-4図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成

ウ 高齢者の死者が755人で67.8%

死者数(放火自殺者等を除く。)を年齢別にみると、65歳以上の高齢者が67.8%を占めており、特に81歳以上が多くなっている。
年齢階層別の人口10万人当たりの死者数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層が、全年齢層における平均の4.0倍となっている(第1-1-5図)。

第1-1-5図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-5図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 ( )内は、人口10万人当たりの死者数を示す。
3 「死者数」については左軸を、「人口10万人当たりの死者数」については右軸を参照
4 年齢不明者7人を除く
5 人口は、平成28年10月1日現在の人口推計(総務省統計局)による。

また、放火自殺者等を年齢別・性別にみると、特に男性の61歳〜65歳の階層が最も多くなっている(附属資料1-1-20附属資料1-1-21)。

(2)建物火災による死者の状況

ア 建物火災による死者は、死者総数の76.7%で最多

建物火災による死者数は1,114人で、火災による死者の76.7%を占めている。建物火災による負傷者は5,058人で、火災による負傷者の85.7%と、火災による死傷者の多くが建物火災により発生している(附属資料1-1-23)。
また、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が60.5%を占めている(第1-1-6図、附属資料1-1-24)。

第1-1-6図 建物火災における焼損程度ごとの死者発生状況

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第1-1-6図 建物火災における焼損程度ごとの死者発生状況

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 「全焼」とは、建物の焼損部分の損害額が火災前の建物の評価額の70%以上のもの、又はこれ未満であっても残存部分に補修を加えて再使用できないものをいう。
3 「半焼」とは、建物の焼損部分の損害額が火災前の建物の評価額の20%以上のもので全焼に該当しないものをいう。
4 「部分焼」とは、建物の焼損部分の損害額が火災前の建物の評価額の20%未満のものでぼやに該当しないものをいう。
5 「ぼや」とは、建物の焼損部分の損害額が火災前の建物の評価額の10%未満であり焼損床面積が1m2未満のもの、建物の焼損部分の損害額が火災前の建物の10%未満であり焼損表面積が1m2未満のもの、又は収用物のみ焼損したものをいう。

イ 建物火災による死者の88.6%が住宅で発生

建物用途別にみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下本節において、ことわりのない限り同じ。)での死者が987人で、建物火災による死者の88.6%を占めている(第1-1-7図、附属資料1-1-25)。

第1-1-7図 建物用途別の死者発生状況

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第1-1-7図 建物用途別の死者発生状況

(備考)「火災報告」により作成

また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息による死者が37.9%で最も多くなっている(第1-1-8図、附属資料1-1-26

第1-1-8図 建物火災の死因別死者発生状況

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第1-1-8図 建物火災の死因別死者発生状況

(備考)「火災報告」により作成

(3)住宅火災による死者の状況

ア 住宅用火災警報器の普及とともに住宅火災の死者数は減少

平成16年の消防法改正により設置が義務付けられた住宅用火災警報器の設置率は、平成29年6月1日時点で全国で81.7%となっている(第1-1-15表)。
こうした中、平成28年中の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)は885人と、前年と比較して29人(3.2%)減少し、1,220人を記録した平成17年から減少傾向となっている。
また、65歳以上の高齢者は619人で、住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)の69.9%を占めている(第1-1-9図)。

第1-1-9図 住宅火災の件数及び死者の推移(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-9図 住宅火災の件数及び死者の推移(放火自殺者等を除く。)

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 「住宅火災の件数(放火を除く)」、「住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く)」、「住宅火災による高齢者死者数(放火自殺者等を除く)」については左軸を、「65歳以上の高齢者の割合」については右軸を参照

イ 死者発生数は高齢者層で著しく高い

年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、全年齢階層における平均の約4.3倍となっている(第1-1-10図)。

第1-1-10図 住宅火災における年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-10図 住宅火災における年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 ( )内は人口10万人当たりの死者数を示す。
3 「死者数」については左軸を、「人口10万人当たりの死者数」については右軸を参照
4 年齢不明者2人を除く。
5 人口は、平成28年10月1日現在の人口推計(総務省統計局)による。

ウ たばこを発火源とした火災による死者が最多

死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別(不明を除く。)にみると、たばこによるものが最も多く、次いでストーブ、電気器具となっている。
また、死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別(不明を除く。)にみると、寝具類に着火した火災による死者が最も多く、次いで衣類、屑類となっている(第1-1-11図、第1-1-12図)。

第1-1-11図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-11図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成

第1-1-12図 住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-12図 住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成

エ 2時から6時までの時間帯で多くの死者が発生

死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、2時から6時までの時間帯の平均は全時間帯の平均の約1.4倍となっている。
また、死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが440人と最も多くなっている(第1-1-13図、第1-1-14図、附属資料1-1-27)。

第1-1-13図 時間帯別住宅火災の死者(放火自殺者等を除く。)発生状況

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第1-1-13図 時間帯別住宅火災の死者(放火自殺者等を除く。)発生状況

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 「各時間帯の数値」は、出火時刻が不明の火災の310件による死者24人を除く集計結果。「全時間帯の平均」は、出火時刻が不明である火災を含む平均。
3 例えば、時間帯の「0〜2」は、出火時刻が0時0分〜1時59分の間であることを表す。

第1-1-14図 住宅火災の死に至った経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-14図 住宅火災の死に至った経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

(備考) 「火災報告」により作成

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