特集1 平成29年7月九州北部豪雨の被害と対応
1.災害の概要
(1)気象の状況
平成29年6月30日から7月4日にかけて、梅雨前線が北陸地方や東北地方に停滞し、その後ゆっくり南下して、7月5日から10日にかけては朝鮮半島付近から西日本に停滞した。
また、7月2日9時に沖縄の南で発生した台風第3号は、東シナ海を北上し、7月4日8時頃に長崎市に上陸した後、東に進み、翌5日9時に日本の東で温帯低気圧に変わった。
梅雨前線や台風第3号の影響により、西日本から東日本にかけて局地的に猛烈な雨が降り、大雨となった。特に、7月5日から6日にかけては、対馬海峡付近に停滞した梅雨前線に向かって暖かく非常に湿った空気が流れ込んだ影響により、線状降水帯が形成・維持され、同じ場所に猛烈な雨を継続して降らせたことから、西日本で記録的な大雨となった。島根県浜田市、福岡県朝倉市、大分県日田市などでは、最大24時間降水量が統計開始以来1位の値を更新する記録的な大雨となった。気象庁は、この大雨について、島根県、福岡県及び大分県に、それぞれ7月5日5時55分、17時51分及び19時55分に特別警報を発表し、最大限の警戒を呼び掛けた。
この大雨の影響で、特に福岡県朝倉市、同県東峰村及び大分県日田市など九州北部を中心に、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が発生し、甚大な人的、物的被害が発生した。
気象庁は、7月5日から6日に九州北部地方で発生した豪雨について、「平成29年7月九州北部豪雨」と命名した。
特集1-1図 7月5日0時から7月6日24時までの九州北部地方の期間降水量分布図
画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

(備考)気象庁提供
(2)被害の状況
「平成29年7月九州北部豪雨」では、猛烈な雨の影響で、山間部の中小河川が増水、氾濫し、土砂崩れ等が発生した。これにより、福岡県及び大分県で死者37人、行方不明者4人(平成29年11月2日現在)の人的被害が発生し、住家等にも多大な被害がもたらされた。
河川の氾濫、土砂災害等により、特に甚大な被害が発生した朝倉市、東峰村及び日田市では、道路崩壊、鉄道橋流失、土砂流入、冠水等により交通が寸断され、多数の集落が孤立状態となった。さらに、一部地域においては、NTT回線及び携帯電話が不通となり、大勢の住民の安否が確認できない状態が発生した。
また、山腹崩壊及び土石流の発生に伴い大量の流木が下流に流れ、通行障害の一因となったほか、土砂とともに住家に流入するなどして多大な被害をもたらした。

その他、電気、ガス、水道等のライフラインも寸断され、住民生活に大きな支障が生じた。
なお、平成29年7月九州北部豪雨を含む6月30日からの梅雨前線に伴う大雨及び台風第3号による各地の被害状況について、特集1-1表にとりまとめた。

(兵庫県消防防災航空隊提供)
