平成29年版 消防白書

第6節 震災対策

[地震災害の現況と最近の動向]

1.平成28年以降の主な地震災害

平成28年中に震度5弱以上が観測された地震は33回(前年10回)であった(第1-6-1表)。

第1-6-1表 最大震度別地震発生状況の推移(震度5弱以上)

【出典】「気象庁資料」

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第1-6-1表 最大震度別地震発生状況の推移(震度5弱以上)

※平成29年は1月1日から10月31日までの数値

平成28年以降の主な地震災害については、「第1-6-2表」のとおり。

第1-6-2表 平成28年以降の国内の主な地震災害(消防庁災害対策本部を設置したもの)

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第1-6-2表 平成28年以降の国内の主な地震災害(消防庁災害対策本部を設置したもの)

(備考)「災害年報」及び「消防庁とりまとめ報」により作成

平成28年4月14日21時26分、熊本県熊本地方の深さ11kmを震源として、マグニチュード6.5の地震が発生し、最大震度7が益城町で観測された。
さらに、28時間後の4月16日1時25分、熊本県熊本地方の深さ12kmを震源として、マグニチュード7.3の地震が発生し、最大震度7が益城町及び西原村で観測された。
その後、熊本県から大分県にかけて地震活動が活発な状態で推移した。気象庁はこれらの地震を含め、4月14日21時26分以降に発生した熊本県を中心とする地震活動を「平成28年(2016年)熊本地震」と命名した。
気象庁による震度観測開始以降、震度7を観測したのは本地震がそれぞれ4、5例目となった。これまで、国内において2度の震度7を観測した地域は例がなく、さらに、連続して発生したことも観測史上初めてのことであった。
その後、梅雨前線等の影響により、熊本県において6月19日から続いた大雨は、地震によって地盤が緩んだところに土砂災害を生じさせるなど、二次的な被害をもたらした。

南阿蘇村の土砂災害の状況(熊本県提供)
南阿蘇村の土砂災害の状況
(熊本県提供)

消防庁では、4月14日21時26分に消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部を設置し(第3次応急体制)、震度5弱以上を観測した熊本県及び宮崎県に対し、適切な対応及び被害報告を要請するとともに、当該県内の消防本部及び市町村に直接被害状況の問合せを実施した。
さらに、4月16日1時25分に発生した地震を受け、震度6弱以上を観測した熊本県及び大分県に対し、適切な対応及び被害報告を要請するとともに、当該県内の消防本部及び市町村に直接被害状況の問合せを実施した。
被災地では、地元消防本部のほか、県内消防応援隊及び緊急消防援助隊が総力を挙げて消火・救助・救急活動等に従事し、これらの消防機関により376人の人命救助が実施され、2,285人が救急搬送された。
また、消防団の活動においても、常備消防と連携したものも含め、益城町で51人、南阿蘇村で5人、西原村で15人など多数の人命救助が実施された。
この地震による人的被害は、死者249人(熊本県246人及び大分県3人)、重傷者1,184人及び軽傷者1,606人並びに住家被害は、全壊8,674棟、半壊34,563棟及び一部破損162,312棟(平成29年10月16日現在)と甚大な被害が発生した。

平成28年6月16日14時21分に内浦湾を震源とするマグニチュード5.3の地震が発生し、最大震度6弱が北海道函館市で観測された。なお、この地震による津波は観測されなかった。
この地震で震度5弱以上を観測したのは、北海道のみであった。
消防庁では、14時21分に消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部を設置し(第3次応急体制)、震度6弱を観測した北海道に対し、適切な対応及び被害報告について要請を行った。
この地震による人的被害は、軽傷者1人及び住家被害は、一部破損3棟であった。

平成28年10月21日14時07分に鳥取県中部を震源とするマグニチュード6.6の地震が発生し、最大震度6弱が鳥取県で観測された。なお、この地震による津波は観測されなかった。
各地の最大震度(震度5弱以上)は、【震度6弱】鳥取県、【震度5強】岡山県、【震度5弱】島根県であった。
消防庁では、14時07分に消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部を設置し(第3次応急体制)、震度5弱以上を観測した鳥取県、岡山県及び島根県に対し、適切な対応及び被害報告について要請を行った。
この地震による人的被害は、重傷者9人(鳥取県8人及び岡山県1人)及び軽傷者23人並びに住家被害は、全壊18棟、半壊312棟及び一部破損15,079棟であった(平成29年10月20日現在)。

平成28年11月22日5時59分に福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生し、最大震度5弱が福島県、茨城県及び栃木県で観測された。
気象庁は、地震発生から3分後の6時02分、福島県に津波警報を発表し、同時刻に青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、茨城県、千葉県九十九里・外房に津波注意報を発表した。7時26分には千葉県内房及び伊豆諸島が津波注意報の対象に加えられ、8時09分には、宮城県に発表されていた津波注意報が、津波警報へ切り替えられた。
その後、9時46分には宮城県及び福島県に発表されていた津波警報は津波注意報に切り替えられ、全ての津波注意報が解除されたのは12時50分であった。
この地震により、宮城県仙台港で最大1.4mの津波が観測されるなど、各地で津波が観測された。
消防庁では、5時59分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置し(第1次応急体制)、震度5弱を観測した福島県、茨城県及び栃木県に対し、適切な対応及び被害報告について要請を行った。
さらに、6時55分には、津波により被害が発生するおそれがあるため、消防庁の体制を国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部に改組した(第2次応急体制)。
この地震による人的被害は、重傷者3人(福島県2人及び千葉県1人)及び軽傷者18人並びに住家被害は、一部破損9棟であった。なお、津波による被害の報告はなかった。
また、気象庁より、この地震は「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の余震と考えられる旨の発表があった。

平成28年12月28日21時38分に茨城県北部を震源とするマグニチュード6.3の地震が発生し、最大震度6弱が茨城県高萩市で観測された。なお、この地震による津波は観測されなかった。
この地震で震度5弱以上を観測したのは、茨城県のみであった。
消防庁では、21時38分に消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部を設置し(第3次応急体制)、震度6弱を観測した茨城県に対し、適切な対応及び被害報告について要請を行った。
この地震による人的被害は、軽傷者2人及び住家被害は、半壊1棟及び一部破損25棟であった。
また、気象庁より、この地震は「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の余震と考えられる旨の発表があった。

平成29年6月20日23時27分に豊後水道を震源とするマグニチュード5.0の地震が発生し、最大震度5強が大分県佐伯市で観測された。なお、この地震による津波は観測されなかった。
この地震で震度5弱以上を観測したのは、大分県のみであった。
消防庁では、23時27分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部を設置し(第2次応急体制)、震度5強を観測した大分県に対し、適切な対応及び被害報告について要請を行った。
この地震による人的、住家被害はなかった。

平成29年6月25日7時02分に長野県南部を震源とするマグニチュード5.6の地震が発生し、最大震度5強が長野県王滝村及び木曽町で観測された。なお、この地震による津波は観測されなかった。
この地震で震度5弱以上を観測したのは、長野県のみであった。
消防庁では、7時02分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部を設置し(第2次応急体制)、震度5強を観測した長野県に対し、適切な対応及び被害報告について要請を行った。
この地震による人的被害は、軽傷者2人及び住家被害は、一部破損27棟であった。

平成29年7月11日11時56分に鹿児島湾を震源とするマグニチュード5.3の地震が発生し、最大震度5強が鹿児島県鹿児島市で観測された。なお、この地震による津波は観測されなかった。
この地震で震度5弱以上を観測したのは、鹿児島県のみであった。
消防庁では、11時56分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部を設置し(第2次応急体制)、震度5強を観測した鹿児島県に対し、適切な対応及び被害報告について要請を行った。
この地震による人的被害は、軽傷者1人で、住家被害はなかった。

平成29年9月8日22時23分に秋田県内陸南部を震源とするマグニチュード5.2の地震が発生し、最大震度5強が秋田県大仙市で観測された。なお、この地震による津波は観測されなかった。
この地震で震度5弱以上を観測したのは、秋田県のみであった。
消防庁では、22時23分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部を設置し(第2次応急体制)、震度5強を観測した秋田県に対し、適切な対応及び被害報告について要請を行った。
この地震による人的被害はなかったが、住家被害は、一部破損4棟であった。

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