平成29年版 消防白書

第3章 国民保護への対応

1.国民保護法の成立

(1)国民保護法の制定経緯

米国での同時多発テロや北朝鮮による弾道ミサイル発射等により、我が国の安全保障に対する国民の関心が高まるとともに、大量破壊兵器の拡散や国際テロ組織の存在が重大な脅威となっている。
こうした状況の下、我が国に対する武力攻撃という国家の緊急事態に対処できるように必要な備えをするため、有事法制の整備が進められ、平成15年6月に「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(平成15年法律第79号。以下「事態対処法」という。)が公布・施行された。
武力攻撃事態等*1への対処に関する基本理念等を規定した基本法的な性格を有している事態対処法の審議と並行して、個別の有事法制の1つとして国民の保護に関する法制についても検討が進められた。事態対処法においても、国民の保護に関する法制を速やかに整備することが規定されたこと等も受けて、平成16年6月には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(平成16年法律第112号。以下「国民保護法」という。)が成立し、関係政令とともに同年9月17日に施行された。
なお、事態対処法は、平成28年3月に「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」に改正された。

武力攻撃事態の4類型及び緊急対処事態の例の画像。

*1 武力攻撃事態等:武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態のこと。武力攻撃とは、我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。武力攻撃事態とは、武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいい、武力攻撃予測事態とは、武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。

(2)国民保護法の目的

国民保護法の目的は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするため、国、地方公共団体、指定公共機関等の責務をはじめ、住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置等について定めることにより、国全体として万全の態勢を整備することにある。
緊急対処事態*2に関しても、武力攻撃事態等への対処と同様の措置をとることとされており、これにより、武力攻撃事態や大規模テロ等から国民を保護するための法的基盤が整えられた。

武力攻撃事態の4類型及び緊急対処事態の例の画像。

*2 緊急対処事態:武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態(後日対処基本方針において武力攻撃事態であることの認定が行われることとなる事態を含む。)で、国家として緊急に対処することが必要なものをいう。

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