6.消防用設備等
(1)消防同意の現況
消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。
消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるよう体制の充実や連携の強化を図っている。
平成29年度の全国における消防同意事務に係る処理件数は、24万7,443件で、そのうち不同意としたものは27件であった(第1-1-18表)。
第1-1-18表 消防同意処理状況
(件)
(備考)「防火対象物実態等調査」により作成
(2)消防用設備等の設置の現況
消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所要の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。
全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみると、平成30年3月31日現在、スプリンクラー設備の設置率(設置数/設置必要数)は99.7%、自動火災報知設備の設置率は99.0%となっている(第1-1-19表)。
第1-1-19表 全国における特定防火対象物のスプリンクラー設備及び自動火災報知設備の設置状況
(平成30年3月31日現在)
(備考)
1 「防火対象物実態等調査」により作成
2 設置率は、小数点第2位を四捨五入している。(*は、四捨五入の結果100%と表記している。)。
消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。近年では、平成25年10月に発生した福岡県福岡市の有床診療所火災(死者10人、負傷者5人)を踏まえ、避難のために患者の介助が必要な有床診療所・病院について、原則として面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置を義務付けることとした。消防法施行令の一部を改正する政令等(平成26年10月16日公布)により、スプリンクラー設備の設置については、平成28年4月1日から施行された。施行に際し、既存の施設については、平成37年6月30日までに設置することとする経過措置が定められた。
また、平成28年12月に発生した新潟県糸魚川市の大規模火災(焼損床面積30,213.45m²)を踏まえ、火を使用する設備又は器具を設けた飲食店等には、原則として面積にかかわらず消火器具の設置を義務付けることとし、消防法施行令の一部を改正する政令等(平成30年3月28日公布)により、平成31年10月1日から施行することとされた。
消防用設備等の設置義務違反等の消防法令違反対象物については、消防法に基づく措置命令等を積極的に発し、迅速かつ効果的な違反処理を更に進めることとしている。
(3)消防設備士及び消防設備点検資格者
消防用設備等は、消防の用に供する機械器具に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、火災が発生した際に本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士に限って行うことができることとされている。
また、消防用設備等は、いかなるときでも機能を発揮できるように日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(消防庁長官の登録を受けた法人が実施する一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。
消防設備士及び消防設備点検資格者には、消防用設備等に関する新しい知識や技能の習得のため、免状取得後の一定期間ごとに再講習を受けることを義務付けることにより資質の向上を図っている。また、これらの者が消防法令に違反した場合においては、免状の返納命令等を実施している。
平成30年3月31日現在、消防設備士の数は延べ117万4,632人となっており(附属資料1-1-49)、また、消防設備点検資格者の数は特殊(特殊消防用設備等)700人、第1種(機械系統)15万5,221人、第2種(電気系統)14万6,517人となっている。
なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、各都道府県単位で自主的に実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行が図られている。
(4)防炎規制
ア 防炎物品の使用状況
建築物内等で着火物となりやすい各種の物品に燃えにくいものを使用することで、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上非常に有効である。このため、高層建築物や地下街のような構造上、形態上特に防火に留意する必要のある防火対象物や、劇場や旅館、病院等の不特定多数の人や要配慮者が利用する防火対象物(以下「防炎防火対象物」という。)において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(以下「防炎対象物品」という。)には、消防法により、所定の防炎性能を有するもの(以下「防炎物品」という。)を使用することを義務付けている。
平成30年3月31日現在、全国の防炎防火対象物数は、96万7,993件であり、適合率(防炎防火対象物において使用される防炎対象物品が全て防炎物品である防炎防火対象物の割合)は、カーテン・どん帳等を使用する防炎防火対象物で86.4%、じゅうたんを使用する防炎防火対象物で86.2%、展示用合板を使用する防炎防火対象物で82.7%となっている(第1-1-20表)。
第1-1-20表 防炎防火対象物数及び防炎物品の使用状況
(平成30年3月31日現在)
(備考)
1 「防火対象物実態等調査」により作成
2 高層建築物(高さ31メートルを超える建築物)は、消防法施行令別表第一において区分されるものではない。また、高層建築物に該当する防火対象物は、「防炎防火対象物の区分」中、「高層建築物」の欄に計上。
イ 寝具類等の防炎品の普及啓発
カーテンやじゅうたん等の消防法で定められている防炎対象物品以外の布団やパジャマ、自動車やオートバイのボディカバー等についても、防炎品を使用することは火災予防上非常に有効であることから、消防庁ではホームページ(参照URL:http://www.fdma.go.jp/html/life/yobou_contents/materials/)において、これらの防炎品の効果に係る動画を掲載するなど、その普及啓発を行っている。
(5)火を使用する設備・器具等に関する規制
火災予防の観点から、こんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備などの火を使用する設備・器具等の位置、構造、管理及び取扱いについては、「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)」に基づき各市町村が定める火災予防条例によって規制されている。