平成30年版 消防白書

2.地下施設等の災害対策の現況

(1)鉄道トンネル

鉄道トンネルに関しては、国土交通省と連携し、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、消火、避難設備等の設置の促進及び所在市町村における火災事故防止対策の強化を図っている。青函トンネル(延長約53.9km)については、さらに長大海底トンネルとしての火災対策を取りまとめ、消防機関等へ周知している。
また、平成15年2月に発生した韓国大邱(テグ)市における地下鉄道の火災を踏まえ、国土交通省において、鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正が行われたことに伴い、消防庁としても、地下鉄道における火災対策について、平成17年1月7日付け「電気設備・運転等の解説」及び平成18年12月13日付け「地下駅等の不燃化・火災対策設備等の解説」を発出し、都道府県を通じ各消防機関に周知している。

(2)道路トンネル

道路トンネルに関しては、昭和54年(1979年)7月に発生した日本坂トンネル火災事故を契機に関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る火災事故防止対策の充実に努めている。
平成9年(1997年)12月に供用が開始された東京湾横断道路(東京湾アクアライン)(延長約15.1km、うちトンネル延長約9.5km)については、関係地方公共団体、消防機関及び東日本高速道路株式会社が連携を図り、防災対策の充実強化等所要の対策を講じている。
平成27年3月に全線供用した首都高速道路中央環状線山手トンネル(延長約18.2km)については、都市内長大トンネルの防災安全に関する調査研究委員会における検討結果を踏まえ、非常用施設の設置、発災時の運用、広報啓発活動等の総合的な防災安全対策が講じられている。

(3)大深度地下空間

公共の利益となる事業による大深度地下*1の使用に関し、当該事業の円滑な遂行と大深度地下の適正かつ合理的な利用を図ることを目的とした大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が平成12年(2000年)5月に制定され、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が、それぞれ開催されている。
大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残されるおそれがあり、従来の施設と比較して消火活動や救助活動がより困難になることが予想されている。
このため、消防庁、国土交通省等関係機関において大深度地下施設の用途、深度、規模等に応じた安全対策について検討を行い、平成16年2月に「大深度地下の公共的使用における安全の確保に係る指針」を取りまとめた。
大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の適用としてこれまでに、神戸市が兵庫県知事に申請を行った大容量送水管整備事業が平成19年6月に、関東地方整備局、東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社が国土交通大臣に申請を行った東京外かく環状道路(関越~東名)が平成26年3月に、東海旅客鉄道株式会社が国土交通大臣に申請を行った中央新幹線(品川・名古屋間)が平成30年10月にそれぞれ認可を受けた。

*1 大深度地下:〔1〕地下40m以深か〔2〕支持地盤上面から10m以深のいずれか深い方の地下

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