平成30年版 消防白書

4.情報化の最近の動向

(1)消防防災通信ネットワークの充実強化

消防庁では、ICTを積極的に活用し、次の事項に重点をおいて消防防災通信ネットワークの充実強化を推進することにより、地方公共団体と一体となって国民の安心・安全をより一層確かなものとすることとしている。

ア 住民への災害情報伝達手段の多重化・多様化

豪雨、津波等の災害時においては、一刻も早く住民に警報等の防災情報を伝達し、警戒を呼びかけることが、住民の安全を守る上で極めて重要である。防災行政無線(同報系)は、東日本大震災においても住民への大津波警報等の伝達に活用されたが、地域によっては長期間の停電や庁舎の被害により使用できなかったこと、津波により屋外スピーカーが被害を受けたこと等が報告されている。また、昨今においては、大雨の際に屋外スピーカーからの音声が聞こえにくいことや緊急速報メールを受信する携帯電話等を保有していない高齢者等への情報伝達が課題となっている。
こうしたことを踏まえ、防災行政無線、緊急速報メール、コミュニティFM等の多様な情報伝達手段を組み合わせることに加え、防災行政無線の戸別受信機や自動起動ラジオ等の個別に情報を伝達する手段を地域の実情に応じて組み合わせることなどにより、高齢者などの地域住民にきめ細かく防災情報が行き渡るよう災害情報伝達手段等の高度化を図る必要がある。
消防庁では、平成29年3月に「防災行政無線等の戸別受信機の普及促進に関する研究会」を設置し、自治体による戸別受信機の配備を促進するための方策の検討を行い、同年6月に、戸別受信機の機能に係る標準的なモデル及びその仕様書(例)の作成や調達・整備・維持管理方法の工夫による整備費用の低廉化などの普及促進方策をとりまとめた。同年8月には「防災行政無線等の戸別受信機の標準的なモデル等のあり方に関する検討会」を開催し、平成30年3月に戸別受信機の標準的なモデル及び仕様書(例)を示した。
また、地方公共団体の住民への災害情報伝達手段の整備を支援するため、専門的知見を有するアドバイザーの地方公共団体への派遣事業を平成25年度から実施している。
なお、平成26年8月に発生した広島市の土砂災害等を踏まえ、防災行政無線を整備済の市区町村において、土砂災害警戒区域の世帯や、高齢者や障害者などの世帯を中心に、戸別受信機の追加配備に要する経費について、平成27年度から特別交付税措置の対象とし、平成30年度からは、戸別受信機と同等の機能を有するその他の装置についても措置の対象として整備促進を図っている。

イ 防災行政無線のデジタル化の推進

近年、携帯電話、テレビ放送等様々な無線通信・放送分野においてデジタル化が進展し、データ伝送等による利用高度化が図られてきている。防災行政無線についても、これまではアナログ方式による音声及びファクシミリ主体の運用が行われてきたが、今後はICTを積極的に活用し、安心・安全な社会を実現するために、文字情報や静止画像について双方向通信可能なデジタル方式に移行することで、防災情報の高度化・高機能化を図ってきている(第2-9-7図)。

第2-9-7図 防災行政無線デジタル化の概要

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第2-9-7図 防災行政無線デジタル化の概要

(2)消防防災業務の業務・システムの最適化

消防防災業務の業務・システムの最適化計画(平成20年3月28日総務省行政情報化推進委員会決定)に基づき進めた情報システムの統合・集約化については、平成24年度末で完了し、平成26年度に消防庁の業務継続体制の確立を図るため、災害応急対策に係る情報システムのバックアップを構築した。
引き続き、消防防災業務を効率的・効果的・継続的に行う観点から、世界最先端IT国家創造宣言(平成25年6月閣議決定)を踏まえ、物理サーバから仮想サーバへ順次移行するとともに、消防庁情報システム運用継続計画に基づく非常時優先業務の継続に必要なバックアップサイトを増強させ、情報システムの最適化を図っていくこととしている。

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