令和元年版 消防白書

2.火災による死者の状況

(1)火災による死者の状況

平成30年中の「火災による死者数」は1,427人で、そのうち放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)を除いた死者数は1,184人と前年に比べ増加しているが、おおむね減少傾向となっている。また、負傷者数も6,114人と前年に比べ増加しているが、おおむね減少傾向となっている。また、放火自殺者等は、火災による死者の総数の17.0%を占めている(第1-1-3図)。

第1-1-3図 火災による死傷者数の推移

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第1-1-3図 火災による死傷者数の推移

(備考)「火災報告」により作成

ア 1日当たりの火災による死者数は3.9人

1日当たりの火災による死者数は3.9人となっている(附属資料1-1-9)。
人口10万人当たりの火災による死者数を都道府県別にみると、最も多いのは長野県で2.2人、最も少ないのは高知県で0.6人となっている。また、全国平均では1.1人となっている(附属資料1-1-13)。
死者発生状況を月別でみると、火気を使用する機会が多い1月から3月及び12月で多くなっている(附属資料1-1-14附属資料1-1-15)。
火災100件当たりの死者発生状況を時間帯別にみると、23時から5時の時間帯で多くなっている(附属資料1-1-16附属資料1-1-17)。

イ 死因は火傷、次いで一酸化炭素中毒・窒息が多い

死因は、火傷が最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息となっている(附属資料1-1-18)。
死亡に至った経過をみると、死者数(放火自殺者等を除く。)のうち、逃げ遅れが全体の49.4%を占めている。その中でも「避難行動を起こしているが、逃げ切れなかったと思われるもの(一応自力避難したが、避難中火傷、ガス吸引し病院等で死亡した場合を含む。)。」が最も多く、全体の17.3%を占めている(第1-1-4図、附属資料1-1-19)。

第1-1-4図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-4図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成

ウ 高齢者の死者が837人で70.7%

死者数(放火自殺者等を除く。)を年齢別でみると、65歳以上の高齢者が70.7%を占めており、特に81歳以上が多くなっている。
年齢階層別の人口10万人当たりの死者数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層が、全年齢階層における平均の4.3倍となっている(第1-1-5図)。

第1-1-5図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-5図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 ( )内は、人口10万人当たりの死者数を示す。
3 「死者数」については左軸を、「人口10万人当たりの死者数」については右軸を参照
4 年齢不明者9人を除く。
5 人口は、平成30年10月1日現在の人口推計(総務省統計局)による。

また、放火自殺者等を年齢別・性別にみると、特に男性の66歳~70歳の階層が最も多くなっている(附属資料1-1-20附属資料1-1-21)。

(2)建物火災による死者の状況

ア 建物火災による死者は、死者総数の80.3%で最多

建物火災による死者数は、1,146人で、火災による死者の80.3%を占めている。建物火災による負傷者は5,172人で、火災による負傷者の84.6%と、火災による死傷者の多くが建物火災により発生している(附属資料1-1-23)。
また、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が58.8%を占めている(第1-1-6図、附属資料1-1-24)。

第1-1-6図 建物火災における焼損程度ごとの死者発生状況

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第1-1-6図 建物火災における焼損程度ごとの死者発生状況

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 「全焼」とは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の70%以上のもの、又はこれ未満であっても残存部分に補修を加えて再使用できないものをいう。
3 「半焼」とは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の20%以上のもので全焼に該当しないものをいう。
4 「部分焼」とは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の20%未満のものでぼやに該当しないものをいう。
5 「ぼや」とは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10%未満であり焼損床面積が1m²未満のもの、建物の焼き損害額が火災前の建物の10%未満であり焼損表面積が1m²未満のもの、又は収容物のみ焼損したものをいう。

イ 建物火災による死者の89.7%が住宅で発生

建物用途別にみると、住宅での死者が1,028人で、建物火災による死者の89.7%を占めている(第1-1-7図、附属資料1-1-25)。

第1-1-7図 建物用途別の死者発生状況

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第1-1-7図 建物用途別の死者発生状況

(備考)「火災報告」により作成

また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息による死者が37.6%で最も多くなっている(第1-1-8図、附属資料1-1-26)。

第1-1-8図 建物火災の死因別死者発生状況

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第1-1-8図 建物火災の死因別死者発生状況

(備考)「火災報告」により作成

(3)住宅火災による死者の状況

ア 住宅火災の死者は減少傾向

平成30年中の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)は946人と、前年と比較して57人(6.4%)増加したが、おおむね減少傾向となっている。
また、住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)のうち65歳以上の高齢者の死者数は668人で、全体の70.6%を占めている(第1-1-9図)。

第1-1-9図 住宅火災の件数及び死者の推移(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-9図 住宅火災の件数及び死者数の推移(放火自殺者等を除く。)

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 「住宅火災の件数(放火を除く)」、「住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く)」、「住宅火災による高齢者死者数(放火自殺者等を除く)」については左軸を、「65歳以上の高齢者の割合」については右軸を参照

イ 死者数は高齢者層で著しく高い

年齢階層別の人口10万人当たりの死者数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、全年齢階層における平均の約4.4倍となっている(第1-1-10図)。

第1-1-10図 住宅火災における年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-10図 住宅火災における年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 ( )内は人口10万人当たりの死者数を示す。
3 「死者数」については左軸を、「人口10万人当たりの死者数」については右軸を参照
4 年齢不明者2人を除く。
5 人口は、平成30年10月1日現在の人口推計(総務省統計局)による。

ウ たばこを発火源とした火災による死者が最多

住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)をみると、たばこによる死者が最も多く、次いでストーブ、電気器具となっている(不明を除く。)(第1-1-11図)。

第1-1-11図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-11図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成

また、住宅火災の着火物(発火源から最初に着火した物)別死者数(放火自殺者等を除く。)をみると、寝具類に着火した火災による死者が最も多く、次いで衣類、屑類となっている(不明を除く。)(第1-1-12図)。

第1-1-12図 住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-12図 住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成

エ 22時から翌朝4時までの時間帯の住宅火災で多くの死者が発生

住宅火災の死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、22時から翌朝4時までの時間帯の平均は全時間帯の平均の約1.5倍となっている(第1-1-13図、附属資料1-1-27)。

第1-1-13図 時間帯別住宅火災の死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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第1-1-13図 時間帯別住宅火災の死者発生状況(放火自殺者等を除く。)発生状況

(備考)
1 「火災報告」により作成
2 「各時間帯の数値」は、出火時刻が不明の死者31人を除く集計結果。「全時間帯の平均」は、出火時刻が不明である火災を含む平均
3 例えば、時間帯の「0~2」は、出火時刻が0時0分~1時59分の間であることを表す。

また、死者(放火自殺者等を除く。)の発生状況を死に至った経過別にみると、逃げ遅れが519人と最も多くなっている(第1-1-14図)。

第1-1-14図 住宅火災の死に至った経過別死者発生状況(放火自殺等を除く。)

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第1-1-14図 住宅火災の死に至った経過別死者発生状況(放火自殺等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成

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