令和元年版 消防白書

3.消防財政

(1)市町村の消防費

ア 消防費の決算状況

市町村の普通会計(地方公営事業会計以外の会計をいう。)における平成29年度の消防費決算額(東京消防庁を含む。以下同じ。)は2兆62億円で、前年度に比べ207億円(1.0%)の増加となっており、市町村の普通会計歳出決算額58兆1,285億円に占める消防費決算額の割合は3.5%となっている。また、平成29年度の1世帯当たりの消防費決算額の全国平均額は3万4,905円であり、住民1人当たりでは1万5,685円となっている(第2-1-4表)。

第2-1-4表 普通会計歳出決算額と消防費決算額との比較並びに1世帯当たり及び住民1人当たり消防費の推移

第2-1-4表 普通会計歳出決算額と消防費決算額との比較並びに1世帯当たり及び住民1人当たり消防費の推移

(備考)
1 「地方財政の状況」(総務省)及び「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数」(総務省)により作成
2 世帯数及び人口は、それぞれの年度の1月1日現在の計数を用いている。
3 各決算額は純計額であり、消防に関する一部事務組合等に対する負担金等の重複は除いている。
4 普通会計決算額には東京消防庁を含む。

イ 消防費の性質別内訳

平成29年度消防費決算額2兆62億円の性質別内訳は、人件費1兆3,538億円(全体の67.5%)、普通建設事業費3,092億円(同15.4%)、物件費2,114億円(同10.5%)となっており、約7割を人件費が占めている(第2-1-5表)。

第2-1-5表 消防費の性質別歳出決算額の推移
(単位:億円、%)

第2-1-5表 消防費の性質別歳出決算額の推移

(備考)
1 「地方財政統計年報」(総務省)により作成
2 単位未満を四捨五入しているため、合計等が一致しない場合がある

(2)消防費の財源

ア 財源構成

平成29年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆7,408億円(全体の86.8%)、次いで地方債1,860億円(同9.3%)、国庫支出金245億円(同1.2%)となっている(第2-1-6表)。

第2-1-6表 消防費決算額の財源内訳
(単位:億円、%)

第2-1-6表 消防費決算額の財源内訳

(備考)
1 「地方財政統計年報」(総務省)により作成
2 単位未満を四捨五入しているため、合計等が一致しない場合がある。

イ 地方交付税

地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定されており(地方債の元利償還金等、他の費目で算定されているものもある。)、令和元年度は、

  • タブレット型情報通信端末等の救急自動車への配備に要する経費を新たに計上したこと
  • 消防救急無線の保守修繕にかかる経費について、実態調査の結果を踏まえ、減額したこと

等により、単位費用は1万1,300円となり、基準財政需要額は1兆6,615億円(対前年度比0.4%減)となっている(第2-1-7表)。

第2-1-7表 消防費の単位費用及び基準財政需要額の推移

第2-1-7表 消防費の単位費用及び基準財政需要額の推移

(備考)「地方交付税関係計数資料」(総務省)により作成

ウ 国庫補助金

市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金は、国庫補助金と都道府県補助金があり、消防庁所管の国庫補助金には消防防災施設整備費補助金(以下「施設補助金」という。)と緊急消防援助隊設備整備費補助金(以下「緊援隊補助金」という。)等がある。
施設補助金は、市町村等の消防防災施設等の整備に対して、原則として補助基準額の3分の1又は2分の1の補助を行っている。なお、補助率の嵩上げが規定されているものがあり、例えば、離島振興法等に基づく振興計画等に掲げる施設に対しては10分の5.5の補助を行っている。緊援隊補助金については、消防組織法第49条第2項による法律補助として、緊急消防援助隊のための一定の設備の整備に対して補助基準額の2分の1の補助を行っている。
令和元年度の当初予算額については、施設補助金は13.5億円、緊援隊補助金は49.9億円となっている。
なお、施設補助金及び緊援隊補助金のほか、消防庁以外の予算により消防費に関する財源とされる国庫補助金等については、「オ その他」に記載している。

エ 地方債

消防防災施設等の整備のためには多額の経費を必要とするが、国庫補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である(附属資料2-1-5)。
このうち、防災対策事業は、地方単独事業として行う防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業等を対象とし、地方債の元利償還金の一部について地方交付税措置が講じられている。
防災基盤整備事業は、防災・減災に資する消防防災施設の整備に関する事業で地域防災計画と整合性を図りつつ行う事業、公共施設及び公用施設の津波浸水想定区域内からの移転事業並びに消防の広域化及び消防の連携・協力関連事業を対象としている。
公共施設等耐震化事業は、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要があるとされた公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。
また、東日本大震災等を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災・減災のための地方単独事業等に取り組むため、<1>大規模災害時の防災・減災対策のために必要な施設の整備、<2>大規模災害に迅速に対応するために緊急に整備する必要のある情報網の構築、<3>津波対策の観点から移転が必要と位置付けられた公共施設等の移転、<4>消防の広域化関連事業又は消防の連携・協力に伴い実施する高機能消防指令センターの整備事業、<5>地域防災計画上、その耐震改修を進める必要があるとされた公共施設及び公用施設の耐震化等を実施する場合には、緊急防災・減災事業の対象とし、地方債の元利償還金の一部について地方交付税措置が講じられている。
このほか、消防防災施設等の整備に係る地方債には、教育・福祉施設等整備事業、一般単独事業(一般事業)、辺地対策事業及び過疎対策事業等がある。

オ その他

前記イ~エのほか、特に消防費に関する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地地域対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金等がある。

(3)都道府県の防災費

都道府県の防災費の状況をみると、平成29年度における決算額は1,317億円であり、平成29年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.27%である(第2-1-8表)。
その内容は、消防防災ヘリコプター、防災資機材及び防災施設の整備・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防、国民保護対策等に要する事務費等である。

第2-1-8表 都道府県の普通会計歳出決算額と防災費決算額等の推移
(単位:百万円、%)

第2-1-8表 都道府県の普通会計歳出決算額と防災費決算額等の推移

(備考)
1 「都道府県決算状況調」(総務省)により作成
2 普通会計歳出決算額は、東京消防庁を除く。

(4)消防庁予算額

ア 令和元年度当初予算

消防庁の令和元年度の当初予算額は、一般会計分と復興庁一括計上を合わせて194億33百万円の予算を確保している。また、平成30年12月14日に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に係る事業(以下、「緊急対策事業」という。)については、平成30年度第2次補正予算で44億7百万円、令和元年度当初予算で32億34百万円措置されている。
一般会計予算の規模は、167億62百万円であり、対前年度比で42億4百万円(33.5%)の増額となっており、人件費を除く事業費ベースでは、152億23百万であり、うち緊急消防援助隊設備整備費補助金等の消防補助負担金は、64億63百万円となっている。
主な事業として、大規模災害に備えた緊急消防援助隊等の充実強化69億47百万円(うち緊急対策事業16億円)、様々な災害に対応するための常備消防力等の強化15億29百万円、地域防災力の中核となる消防団及び自主防災組織等の充実強化23億38百万円(うち緊急対策事業16億34百万円)、火災予防対策の推進2億1百万円、消防防災分野における女性の活躍促進2億21百万円、防災情報の伝達体制の強化11億20百万円、G20大阪サミット及び2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等に向けた安心・安全対策の推進13億39百万円、消防防災分野における消防用機器等の海外展開の推進及び科学技術の活用4億83百万円となっている(第2-1-9表、第2-1-5図、第2-1-6図)。

第2-1-9表 令和元年度 消防庁予算の内訳
令和元年度 消防庁予算の内訳
【百万円、%】

第2-1-9表 令和元年度 消防庁予算の内訳

※端数処理の関係上、数値が合わない箇所がある。

第2-1-5図 令和元年度予算の概要

第2-1-5図 令和元年度予算の概要1
第2-1-5図 令和元年度予算の概要2

第2-1-6図 平成30年度補正予算

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第2-1-6図 平成30年度補正予算

イ 復興庁一括計上予算

平成30年度に引き続き、東日本大震災で大きな被害を受けた被災地における消防防災施設・設備の復旧を実施するため、復興庁の東日本大震災復興特別会計において26億71百万円の予算措置を講じた。
○消防防災施設災害復旧費補助金(18億39百万円)
○消防防災設備災害復旧費補助金(4億14百万円)
東日本大震災で大きな被害を受けた被災地における消防防災施設・設備の復旧を緊急に実施するために必要となる経費を補助金として被災地方公共団体に交付するもの(国庫2/3)。
○原子力災害避難指示区域消防活動費交付金(4億3百万円)
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い設定された避難指示区域における大規模林野火災等の災害に対応するため、当該区域の消防活動に伴い必要となる消防車両等の整備等に要する経費、福島県内消防本部の消防車両等及び福島県外からのヘリコプターによる消防応援活動に要する経費、福島県内外の消防本部等の消防応援に係る訓練の実施に要する経費などを全額交付するもの。
○緊急消防援助隊活動費負担金(東日本大震災派遣ヘリ除染)(16百万円)
消防庁長官の指示により緊急消防援助隊として出動したヘリコプターに関し、令和元年度においてエンジン整備時の内部の除染に要する経費を負担するもの。

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