令和元年版 消防白書

3.海外展開への取組

(1)日本の消防用機器等の品質、規格・認証制度の発信

ア 日本の消防用機器等に係る日本の消防制度や規格の英訳の公開

「海外で消防用機器等を販売する際に、日本の消防制度や規格の英訳資料があると交渉しやすい」という民間事業者からの要望を踏まえ、消防庁では、消防法や消防用機器等の認証等、制度に係る事項のほか、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド、自動火災報知設備の感知器及び発信機などの検定対象機械器具等や、動力消防ポンプや消防用ホースなどの自主表示対象品を含む計19品目の規格、基準の英訳を、消防庁ホームページ上で公開している(特集7-1図)(https://www.fdma.go.jp/en/post1.html)。

特集7-1図 消防制度・規格の消防庁HP掲載について

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特集7-1図 消防制度・規格の消防庁HP掲載について

イ 日本の消防用機器等の紹介リーフレットの作成

国際会議や消防防災展などのイベント、政府間協議等の場で日本の消防用機器等の優位性をPRできるよう、分野ごとにとりまとめたリーフレットを業界団体等と共同で作成・配布するとともに、機器ごとの特徴を更に詳細に示した資料を作成し、その活用を図っている(特集7-2図)。

特集7-2図 「Japanese Fire Equipment(日本の消防機器)」リーフレット(平成30年作成)

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特集7-2図 「Japanese Fire Equipment(日本の消防機器)」リーフレット(平成30年作成)

(2)国内の連携体制・日本企業へのサポート

ア 「消防用機器等の海外展開の推進に向けた懇談会」の開催

平成28年度から、関係工業会・関係団体等と「消防用機器等の海外展開の推進に向けた懇談会」を開催し、海外展開に係る情報共有や意見交換を行っている。

イ 日本貿易振興機構(JETRO)と連携したセミナーの開催

海外展開に関心を持つ国内企業に対して、東南アジア諸国の経済概況や日本企業の海外展開の実例などの情報を提供するとともに、海外展開に際して支援を必要としている企業に対して、JETROが実施している海外展開支援サービス等の具体的な支援事業の紹介を行っている。平成31年2月26日には、「消防用機器等海外展開セミナー」を開催し、消防庁の取組、ベトナムにおける消防用機器等を巡る現状や平成30年11月28日から2日間の日程で開催されたフィリピン国際消防防災フォーラムの報告、ベトナムを中心としたASEANの一般経済概況、海外展開支援サービスの実例紹介を行ったところ、約90人の参加者があった。

海外展開セミナーの様子
海外展開セミナーの様子

ウ 個別の消防用機器等が日本規格に適合する旨の英訳の証明書の発出

日本の消防用機器等を輸出する際に日本規格に適合する旨の英訳の証明書を要求されるケースがあるという意見を踏まえ、日本企業の要望に応じて、個々の消防用機器等の日本規格への適合性について、消防庁又は日本消防検定協会から英訳の証明書を発出している(特集7-3図)。

特集7-3図 消防用機器等が日本規格に適合する旨の証明書

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特集7-3図 消防用機器等が日本規格に適合する旨の証明書

(3)国際消防防災フォーラムの活用

消防庁では、諸外国の消防・防災能力の向上を目的に、主にアジア圏内において国際消防防災フォーラムを開催している。平成30年度はフィリピンで開催し、令和元年度は2月にタイで開催予定である。本フォーラムには、開催地の消防・防災関係者が多数集うことから、消防・防災インフラシステムの海外展開を推進する場としても活用すべく、我が国の消防・防災機器関連企業が製品PRのためのプレゼンテーションや展示を行う場を設けている。また、開催地の消防・防災関係者やJETRO等と構築したネットワークを生かし現地代理店候補となりえる企業も招待し、我が国企業のビジネスチャンス拡大を後押ししている。

(4)個別の国に対する日本の消防用機器等の品質、規格・認証制度の浸透への取組

上記に加え、政府レベルにおいて、個別の国の消防・防災関係者に対し、日本の消防用機器等の品質、規格・認証制度を紹介し、日本規格の浸透に向けて取り組み始めている。
特に、日本の消防用機器等に関する規格・認証制度に高い関心を示しているベトナムとは、平成30年10月8日に「日本国総務省とベトナム社会主義共和国公安省との消防分野における協力覚書」を締結した。その後、当該覚書に基づき、複数回にわたり、予防政策や消防用機器等の基準等についての意見交換を実施したほか、日本の消防用機器等の品質の高さをPRするために、我が国の消防・防災機器関連企業による製品のプレゼンテーション等を行った。平成31年3月には、同国公安省副大臣をはじめとする幹部を招へいし、協力関係の推進に向けた意見交換を実施したほか、日本の消防・防災関連機関及び民間事業者の製造工場等の視察を行った。令和元年8月には、ベトナム・ホーチミン市で開催された公安省主催の消防・防災展「Fire Safety & Rescue VIETNAM 2019」に複数の日本の民間事業者が初めて合同で出展し、また同時に開催されたセミナーにおいて、消防庁職員が日本の火災予防政策について発表を行い、官民一体となった働き掛けを行った。

ベトナム公安省との協力覚書の締結
ベトナム公安省との協力覚書の締結
(左より、ベトナム社会主義共和国公安省ヴオン副大臣、
フック首相、日本国安倍総理大臣、総務省古賀政務官(当時))
「Fire Safety&Rescue VIETNAM 2019」における日本ブース
「Fire Safety & Rescue VIETNAM 2019」における日本ブース

引き続き、ベトナムをはじめ幅広く東南アジア諸国等に対し働き掛けていくことで、日本の規格に適合する消防用機器等の海外展開を推進していくこととしている。

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