令和2年版 消防白書

【コラム】救急安心センター事業(♯7119)の推進

救急安心センター事業(♯7119)の概要

救急安心センター事業(♯7119)(以下「♯7119」という。)は、地域の限られた救急車を有効に活用し、緊急性の高い症状の傷病者にできるだけ早く救急車が到着できるようにすることに加え、住民が適時・適切なタイミングで医療機関を受診できるよう支援するため、消防と医療が連携し、救急医療相談と医療機関案内を、短縮ダイヤル(♯7119)で行う電話相談である。
♯7119に寄せられた相談は、医師・看護師・相談員が対応し、病気やけがの症状を把握して、傷病の緊急性や救急車要請の要否の助言、応急手当の方法、適切な診療科目及び医療機関案内等を行っている。
令和2年10月1日現在、全国17地域(北海道札幌市周辺、宮城県、茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県横浜市、新潟県、京都府、大阪府内全市町村、兵庫県神戸市周辺、奈良県、和歌山県田辺市周辺、鳥取県、広島県広島市周辺、山口県、徳島県、福岡県)で事業が実施(人口カバー率46.0%)されている(第2-5-21図)。

第2-5-21図 救急安心センター事業(♯7119)の普及状況

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(令和2年10月1日現在)

第2-5-21図 救急安心センター事業(♯7119)の普及状況

事業の効果

♯7119実施団体からの報告によると、消防面においては、①潜在的な重症者の発見及び救護、②軽症者の搬送割合の減少、③不急の救急出動の抑制といった効果が挙げられており、医療面においては、医療機関の負担軽減や医療費の適正化といった定量的な効果についても見いだされている。
また、平成29年度に内閣府が実施した「救急に関する世論調査」では、♯7119の推進への考え方として、7割以上の方から♯7119を推進していくべきとの回答が得られた。また、♯7119のメリットとして、「119番通報が減り、重症な方を早く搬送できる」、「救急のときに専門家の判断を聞くことができる」、「いざというときの不安が減り、安心して生活ができる」等の回答が得られた(第2-5-22図)。
さらに、大阪府において♯7119を実施している「救急安心センターおおさか」が実施した♯7119の利用者アンケート(救急安心センターおおさかに関するアンケート意識調査(令和元年度実施))では、約9割の方が「大変役に立った」、「ある程度役に立った」と回答しており、住民への安心の提供に寄与している。

第2-5-22図 救急安心センター事業(♯7119)推進への考え方

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(各年中)

第2-5-22図 救急安心センター事業(♯7119)推進への考え方

(備考)
1 平成29年度「救急に関する世論調査」(内閣府)より
2 小数点第二位を四捨五入のため、合計等が一致しない場合がある。

導入促進の取組

消防庁では、「救急安心センター事業(♯7119)の更なる取組の推進について」(平成28年3月31日付け消防救第32号消防庁救急企画室長通知)により、都道府県が、管内消防本部の意向を踏まえつつ、衛生主管部局及び医療関係者等との合意形成を図るなど、♯7119の導入に向け積極的に取り組むことを促している。
平成28年度からは、消防庁職員を事業未導入の道府県や市町村等に派遣し、個別訪問を行い、導入を促進している。平成29年5月には、「救急安心センター事業(♯7119)普及促進アドバイザー制度」を新設し、実際に運営に携わっている自治体職員、医師及び看護師を、消防庁職員とともに各自治体に派遣して、♯7119導入のノウハウなどの幅広いアドバイスや事業実施に向けた課題解決への助言を行う取組を開始し、令和2年4月末までに、延べ16地域に37人のアドバイザーの派遣を行った。
また、「平成30年度救急業務のあり方に関する検討会」の議論を踏まえ、「救急安心センター事業(♯7119)の全国への普及促進について」(平成31年3月29日付け消防庁救急企画室事務連絡)により、♯7119が救急搬送の適正化と同時に適切な医療の提供にも資する事業であることから、都道府県に対して、市町村と連携し、♯7119の実施に向け、積極的に取り組むよう依頼している。
加えて、♯7119に対する住民の認知・理解を図り、利用を促進するため、積極的に広報を行っており、消防庁ホームページ内に住民に向けた♯7119紹介ページを開設するとともに、インターネット媒体(首相官邸メールマガジン、LINE等)の活用や、子どもに人気の高い企業キャラクターと連携することで、幅広い層への認知を図っている。

全国展開に向けた検討部会の設置

令和2年度には、♯7119の更なる普及を進め、「日本全国どこにいても♯7119が繋がる体制」すなわち♯7119の全国展開を目指し、「令和2年度救急業務のあり方に関する検討会」の下で「♯7119の全国展開に向けた検討部会」を開催し、精力的に議論を行った。本検討部会では、未実施団体に対する実態調査や実施団体へのヒアリング調査などを基に、未実施団体が事業導入に対して抱える課題について整理した上で、それぞれの課題に対する解決策について議論が行われた。検討結果の最終的な取りまとめは令和2年度中に行われる予定であるが、一定の成果が得られたものは令和2年8月に「「♯7119の全国展開に向けた検討部会」中間報告書」として公表されている。
また、検討部会で整理された課題のうち、実施団体における事業実施効果(第2-5-10表)の分析・明確化及び事業の質の維持・向上については、「♯7119担当者及び普及促進アドバイザー連絡会」において検討を行い、♯7119の更なる充実に向けた取組を続けている。
限りある搬送資源を緊急性の高い事案に確実に投入するためには、♯7119の全国展開を促進することで、救急車の適正利用を積極的に推進していくことが必要である。

第2-5-10表 救急安心センター事業(♯7119)の事業実施効果

第2-5-10表 救急安心センター事業(♯7119)の事業実施効果

※「「♯7119の全国展開に向けた検討部会」中間報告書」では、上記のほか、高齢者の増加への対応、地域の救急搬送・救急医療の担い手不足への対応といった「時代の変化への的確な対応」や、感染のリスクとなる不必要な外来受診・外出の抑制による重症化防止、新たな感染症への対応なども含めた受け皿としての相談窓口といった「新型コロナウイルス感染症対策」の事業効果が挙げられている。

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