特集5 戸別受信機等の配備促進に向けた取組
1.住民への災害情報伝達手段の多重化・多様化
豪雨や台風等の自然災害が発生した場合、住民に避難勧告等の防災情報を迅速かつ的確に伝達することは、災害から住民の安全を守る上で極めて重要である。災害対策基本法第56条においては、災害に関する予報又は警報の伝達は市町村長の責務とされ、各市町村は、この規定を踏まえ、災害時における住民への情報伝達を的確に行うため、地域の実情に応じて、市町村防災行政無線(同報系)をはじめとする様々な災害情報伝達手段を整備し、情報伝達体制を構築している。
市町村防災行政無線(同報系)は、屋外スピーカーや戸別受信機からの音声により住民に防災情報を一斉に伝達できるものであることから、住民への災害情報伝達手段として最も重要な手段の一つであり、これまで各市町村において整備が進められてきているところであるが、財政的理由等により整備が思うように進んでいない市町村も見受けられる。
このような状況を踏まえ、市町村防災行政無線(同報系)のように屋外スピーカーや屋内受信機からの音声で住民に防災情報を一斉伝達することができ、かつ、比較的安価に整備可能な手段として、平成19年には、MCA陸上移動通信システム及び市町村デジタル移動通信システムを活用した同報系システムの整備、また、平成28年には、FM放送、280MHz帯電気通信業務用ページャー及びV-Lowマルチメディア放送を活用した同報系システムの整備について、地方財政措置の拡充を順次行ってきたところである。また、平成30年7月豪雨を踏まえ、令和元年に、多様な伝達手段の導入を促す取組を強化するため、携帯電話網等を活用し、住民に防災情報を一斉に伝達する手段の整備についても、地方財政措置の拡充を図ったところである。
災害時における住民への確実な情報伝達においては、①一つの手段に頼らず複数の災害情報伝達手段を組み合わせるとともに、②一つ一つの災害情報伝達手段を強靱化することが重要である。防災行政無線等*1のほか、携帯電話等への緊急速報メール、登録制メール、ケーブルテレビ網を活用した情報伝達システム、IP告知システム等、災害情報伝達手段を地域の実情に応じて組み合わせること等により住民へきめ細かく情報を行き渡らせることができるよう、災害情報伝達手段の多重化・多様化を促進することが重要である(特集5-1図)。
特集5-1図 災害情報伝達手段の多重化・多様化
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*1 防災行政無線等:市町村防災行政無線(同報系)及びMCA陸上移動通信システム、市町村デジタル移動通信システム、FM放送、280MHz帯電気通信業務用ページャーやV-Lowマルチメディア放送を活用した同報系システムをいう。