令和5年版 消防白書

3.防火管理制度

(1)防火管理者

消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者(以下、本節において「管理権原者」という。)に対して、自主防火管理体制の中核となる防火管理者*7を選任し、消火、通報、避難訓練の実施等を定めた防火管理に係る消防計画*8の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。
令和5年3月31日現在、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に107万9,072件あり、そのうち83.4%に当たる90万456件について防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届出されている。
また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するために防火管理に係る消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は85万2,516件で全体の79.0%となっている(資料1-1-55)。

(2)統括防火管理者

消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街、一定規模以上の特定防火対象物*9等のうち、管理権原が分かれているものについては、防火管理を一体的に行うため、統括防火管理者を協議して定め、防火対象物全体の防火安全を確立することを各管理権原者に対して義務付けている。
令和5年3月31日現在、統括防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に9万756件あり、そのうち66.8%に当たる6万580件について統括防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届出されている。
また、建物全体の防火管理を一体的に行うため、全体についての消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は5万8,419件で、全体の64.4%となっている(資料1-1-56)。

*7 防火管理者:防火対象物の防火管理に関する講習の課程を修了した者等一定の資格を有し、かつ、防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行できる管理的又は監督的な地位にある者で、管理権原者から選任された者
*8 防火管理に係る消防計画:防火管理者が作成する防火管理上必要な事項を定めた計画書
*9 特定防火対象物:百貨店、飲食店等の多数の者が出入りするものや病院、老人保健施設、幼稚園等要配慮者が利用するもの等の一定の防火対象物

(3)防火対象物定期点検報告制度

消防法では、一定の用途、構造等を有する防火対象物の管理権原者に対して、火災の予防に関して専門的知識を有する者(以下、本節において「防火対象物点検資格者」という。)による点検及び点検結果の消防機関への報告を1年に1回義務付けている。
この防火対象物点検資格者は、消防用設備等の工事等について3年以上の実務経験を有する消防設備士*10や、防火管理者として3年以上の実務経験を有する者等、火災予防に関し一定の知識を有する者であって、総務大臣の登録を受けた法人が行う講習の課程を修了し、防火対象物の点検に関し必要な知識及び技能を修得したことを証する書類の交付を受けた者である。
令和5年3月31日現在、防火対象物点検資格者の数は3万5,323人となっている。
また、防火対象物定期点検報告が義務付けられた防火対象物のうち管理を開始した時から3年が経過しているものは、当該防火対象物の管理権原者の申請に基づいた消防機関が行う検査により、消防法令の基準の遵守状況が優良なものとして認定された場合には、3年間点検・報告の義務が免除される。
なお、防火対象物が、防火対象物点検資格者によって点検基準に適合していると認められた場合は「防火基準点検済証」を、消防機関から消防法令の基準の遵守状況が優良なものとして認定された場合は、「防火優良認定証」を、それぞれ表示することができる。

*10 消防設備士:消防用設備等に関して専門的知識を有する者として、消防設備士免状の交付を受けている者

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