3. 令和5年6月29日からの大雨等に係る被害及び消防機関等の対応状況
(1)災害の概要
ア 気象の状況
令和5年6月28日から7月6日にかけて、活発な梅雨前線や上空の寒気の影響で、沖縄地方を除いて全国的に大雨となった。7月1日から3日にかけては山口県、熊本県及び鹿児島県(奄美地方)で線状降水帯が発生し、6月28日から7月6日までの総降水量は、九州では700ミリを超え、九州北部地方を中心に平年の7月の月降水量を超えた地点があった。
また、7月7日から10日にかけては、梅雨前線が西日本から東北地方付近に停滞し、活動が活発となり、九州北部地方及び中国地方を中心に大雨となった。8日に島根県、10日に福岡県、佐賀県及び大分県で線状降水帯が発生した。気象庁は、10日朝に福岡県及び大分県を対象に大雨特別警報を発表し、災害による命の危険が迫っているとして直ちに身の安全を守る行動をとるよう呼び掛けた。
さらに、7月11日から13日にかけて、本州付近に梅雨前線が停滞するとともに、北海道付近を低気圧が通過し、12日夜遅くには、石川県及び富山県で線状降水帯が発生するなど、北陸地方及び北海道地方を中心に大雨となった。
イ 被害の状況
この記録的な大雨により、西日本から東日本の広い範囲で河川氾濫、浸水、崖崩れ等の被害が発生した。特に、福岡県久留米市や佐賀県唐津市で複数の住家を巻き込む崖崩れが発生するなど、九州地方を中心に、死者13人、行方不明者1人、負傷者16人の人的被害が発生した。
また、住家被害については、山口県で1,189棟、福岡県で4,202棟など、計8,020棟となっている(令和5年11月15日現在)。
なお、令和5年6月29日からの大雨等による各地の被害状況は、特集1-2表のとおりである。
特集1-2表 被害状況(人的・住家被害)(令和5年11月15日現在)
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被害の状況1
(久留米広域消防本部提供)
被害の状況2
(久留米広域消防本部提供)
(2)政府の主な動き及び消防機関等の活動
ア 政府の主な動き
政府においては、6月29日15時00分に情報連絡室を設置するとともに、関係省庁災害警戒会議を開催し、自治体や国民に対し大雨への警戒を呼び掛けた。
その後、7月10日6時40分に福岡県(朝倉市及び東峰村)に大雨特別警報が発表されたことを踏まえ、同時刻に官邸連絡室に改組した(特集1-3表)。
特集1-3表 政府の主な動き
日 付 |
時 刻 |
会議開催等 |
6月29日 |
15時00分 |
情報連絡室設置 |
6月29日 |
15時00分 |
関係省庁災害警戒会議 |
7月3日 |
15時30分 |
関係省庁災害対策会議(第1回) |
7月4日 |
11時15分 |
関係省庁災害対策会議(第2回) |
7月6日 |
15時15分 |
関係省庁災害対策会議(第3回) |
7月10日 |
6時40分 |
官邸連絡室改組 |
7月10日 |
15時15分 |
関係省庁災害対策会議(第4回) |
7月14日 |
15時45分 |
関係省庁災害対策会議(第5回) |
イ 消防庁の対応
消防庁においては、6月29日15時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室(第1次応急体制)を設置し、情報収集体制の強化を図るとともに、都道府県及び指定都市に対し「梅雨前線による大雨についての警戒情報」を同日発出し、災害対応に万全を期するよう呼び掛けた。その後、梅雨前線が日本付近に停滞し、広範囲に被害が発生することが予想されたため、7月3日、4日及び6日にも警戒情報を発出し、大雨に対する更なる警戒を呼び掛けた。
さらに、7月10日6時40分に福岡県(朝倉市及び東峰村)に大雨特別警報が発表されたことを踏まえ、国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部(第2次応急体制)に改組し応急体制の強化を行うとともに、大雨特別警報が発表された福岡県及び大分県に対し迅速な初動対応及び被害報告を要請した。
また、7月10日及び14日にも都道府県及び指定都市に対し警戒情報を発出し、最新の気象情報を提供するとともに、更なる警戒を呼び掛けた(特集1-4表)。
特集1-4表 消防庁の対応
日 付 |
時 刻 |
本部設置等 |
6月29日 |
15時00分 |
応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制) |
6月29日 |
15時45分 |
都道府県及び指定都市に対し「梅雨前線による大雨についての警戒情報」発出 |
7月3日 |
16時23分 |
都道府県及び指定都市に対し「梅雨前線による大雨についての警戒情報」発出 |
7月4日 |
12時01分 |
都道府県及び指定都市に対し「梅雨前線による大雨についての警戒情報」発出 |
7月6日 |
15時59分 |
都道府県及び指定都市に対し「梅雨前線による大雨についての警戒情報」発出 |
7月10日 |
6時40分 |
国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部に改組(第2次応急体制) |
7月10日 |
6時43分 |
大雨特別警報が発表された福岡県に対し迅速な初動対応及び被害報告を要請 |
7月10日 |
8時15分 |
大雨特別警報が発表された大分県に対し迅速な初動対応及び被害報告を要請 |
7月10日 |
15時59分 |
都道府県及び指定都市に対し「梅雨前線による大雨についての警戒情報」を発出 |
7月14日 |
17時08分 |
都道府県及び指定都市に対し「梅雨前線による大雨についての警戒情報」を発出 |
ウ 被災自治体の対応
この大雨により、富山県、岐阜県、三重県、広島県、山口県、福岡県及び大分県の7県が災害対策本部を設置し、大規模な土砂災害が発生した福岡県及び佐賀県は、自衛隊に対し災害派遣要請を行った。
また、被災市町村では、住民に対し、大雨による家屋の浸水や土砂災害への警戒を促すとともに、順次避難指示等を発令し、早期の避難を呼び掛けた。
エ 消防機関の活動
(ア)消防本部
被害を受けた地域を管轄する消防本部では、多数の119番通報が入電し、直ちに救助・救急等の活動に当たったほか、被害状況を把握するため、佐賀県等の消防防災ヘリコプターが情報収集活動等に当たった。
また、大規模な土砂災害が発生した福岡県久留米市、佐賀県唐津市及び大分県由布市では、地元消防本部が消防団や県内消防本部からの応援隊と協力し、救助活動、行方不明者の捜索活動等に当たった。
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救出活動の様子
(久留米広域消防本部提供)
(イ)消防団
富山県、山口県及び九州北部地方の市町村をはじめ、甚大な被害に見舞われた多くの市町村において、消防団は、危険箇所の巡視・警戒、早期避難の呼び掛け、住民の避難誘導及びボートによる救助活動等を行ったほか、土砂撤去等の災害復旧活動を実施した。
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消防団による救助活動の様子
(福岡県うきは市提供)