令和5年版 消防白書

1.火災事故

 令和4年中に危険物施設において発生した火災事故の件数は226件(対前年比2件増)となっており、平成元年(1989年)以降火災事故が最も少なかった平成5年(1993年)の107件と比較すると、危険物施設が減少しているにもかかわらず、約2.1倍に増加している。主な発生要因については、維持管理不十分、操作確認不十分といった人的要因によるものが多くを占めている。

(1)危険物施設における火災事故の被害の状況等

令和4年中の危険物施設における火災事故の被害は、損害額27億5,094万円(対前年比42億9,598万円減)、死者2人(同2人増)、負傷者36人(前年同数)となっている(第1-2-2図)。
危険物施設別の火災事故の発生件数をみると、一般取扱所で発生したものが152件で最も多く、次いで給油取扱所で31件、製造所で29件となっており、これらの3施設区分の合計で全体の93.8%を占めている(第1-2-3図)。
火災事故の出火原因に関係した物質(以下、本節において「出火原因物質」という。)についてみると、火災事故226件のうち危険物が出火原因物質となるものが104件(全体の46.0%)発生している(第1-2-4図)。

(2)危険物施設における火災事故の発生原因等

令和4年中に発生した危険物施設における火災事故の発生要因をみると、人的要因が117件で最も多く、次いで、物的要因が82件、その他の要因(不明及び調査中を含む。)が27件となっている(第1-2-5図)。

第1-2-3図 危険物施設別火災事故発生件数

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(令和4年中)

(備考)
1 「危険物に係る事故の概要」により作成
2 小数点第二位を四捨五入のため、合計等が一致しない場合がある。

第1-2-4図 出火原因物質別火災事故発生件数

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(令和4年中)

(備考)
1 「危険物に係る事故の概要」により作成
2 小数点第二位を四捨五入のため、合計等が一致しない場合がある。

 着火原因別にみると、高温表面熱が42件で最も多く、次いで、静電気火花が38件、過熱着火が24件となっている(第1-2-6図)。

第1-2-5図 発生要因別火災事故発生件数

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(令和4年中)

(備考)
1 「危険物に係る事故の概要」により作成
2 小数点第二位を四捨五入のため、合計等が一致しない場合がある。

第1-2-6図 着火原因別火災事故発生件数

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(令和4年中)

(備考)
1 「危険物に係る事故の概要」により作成
2 小数点第二位を四捨五入のため、合計等が一致しない場合がある。

(3)無許可施設における火災事故

危険物施設として許可を受けるべき施設であるにもかかわらず、許可を受けていないもの(以下、本節において「無許可施設」という。)における令和4年中の火災事故の発生件数は5件(対前年比2件減)であり、死者は0人(前年同数)、負傷者は3人(前年同数)となっている。

(4)危険物運搬中の火災事故

令和4年中の危険物運搬中の火災事故の発生件数は1件(前年同数)となっている。

(5)仮貯蔵・仮取扱い中の火災事故

令和4年中の仮貯蔵・仮取扱い*3中の火災事故の発生件数は0件(前年同数)となっている。

 

*3仮貯蔵・仮取扱い:危険物施設として許可を受けていない場所において、所轄消防長又は消防署長の承認を受け、10日以内の期間に限り、消防法で指定された数量以上の危険物を仮に貯蔵し、又は取り扱うことをいう

 

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