令和5年版 消防白書

第7節 航空消防防災体制

1.航空消防防災体制の現況

消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災における空中消火等の活動で大きな成果を上げている。特に、大地震、台風、豪雨に伴う水害又は土砂災害の発生により、陸上交通路が途絶するような事態では、ヘリコプターの高速性・機動性を活用した情報収集等の消防活動は、重要な役割を果たしている。
令和5年11月1日現在、消防防災ヘリコプターの配備状況は、沖縄県を除く46都道府県域に配備されており、その内訳は消防庁保有が5機、消防機関保有が30機、道県保有が42機、計77機である(第2-7-1図)。

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消防庁ヘリコプター「おとめ」(高知県)

 

第2-7-1図 消防防災ヘリコプターの配備状況

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(備考)「令和5年度航空隊データベース」により作成

 

第2-7-2図 消防防災ヘリコプターによる災害出動状況(過去5年間)

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(備考)「令和4年消防防災ヘリコプターの活用状況調査」により作成

消防防災ヘリコプターは、多様な消防活動でその能力を発揮しており、令和4年中の全国の出動実績は5,483件である(第2-7-2図、資料2-7-1)。
また、令和4年中の消防防災ヘリコプターの総運航時間は17,567時間で、その内訳は、災害出動が4,429時間(25%)、訓練出動が11,338時間(65%)、その他の業務が1,800時間(10%)となっている(第2-7-3図)。
なお、大規模災害時には、消防組織法に基づく緊急消防援助隊としての出動や、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づく、都道府県域を越えた応援活動が展開されている。令和4年中は、緊急消防援助隊としての出動実績は無く(資料2-7-2)、広域航空消防応援としての出動は1件実施された(資料2-8-1)。

第2-7-3図 消防防災ヘリコプターの運航時間の内訳(令和4年)

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単位:時間

(備考)
1 「令和4年消防防災ヘリコプターの活用状況調査」により作成
2 「他隊との合同訓練」とは、相互応援協定及び緊急消防援助隊等に基づく出動を想定した訓練及び管轄区域内の地上部隊等との連携訓練等をいう。
3 「自隊訓練」とは、操縦士の操縦訓練及び航空救助隊員を対象とした通信・救助訓練等をいう。
4 「その他の業務」とは、試験・検査のための飛行、調査・撮影業務及び行政業務等をいう

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