令和5年版 消防白書

3.研究成果をより広く役立てるために

 消防研究センターでは、研究開発によって得られた成果がより広く利活用されるように次の活動を行っている。

(1)一般公開

毎年4月の「科学技術週間」に合わせて消防研究センターを一般に公開し、実験施設等の公開、展示や実演を通じた研究開発等の紹介を行っている。令和5年度は、4年ぶりに実際の施設を公開しての実開催とするとともにオンライン開催も行った。実開催では20項目を公開し、来場者数は約440人であった。また、オンライン開催は令和4年度と同じ11日間ではあったが動画数を21増やして54としたところ、一般公開ページへのアクセス数は令和4年度の約3,800件を上回り約4,300件となった。 

(2)全国消防技術者会議

消防に関わる全国の技術者が消防防災の科学技術に関する調査研究、技術開発等の成果を発表するとともに、他の発表者や聴講者と討論を行う場として、昭和28年度(1953年度)から「全国消防技術者会議」を毎年度開催している。70回目となる令和4年度の会議は、感染拡大防止措置を講じたうえで3年ぶりの会場開催とし、特別講演及び「令和4年度消防防災科学技術賞」の受賞作品の発表を行った。11月16日及び17日の2日間の来場者数は延べ600人を超え、当日の収録動画(21件)を消防研究センターホームページで配信したところ令和5年2月~4月の本ページへのアクセス数は約2,000件となった。 

(3)消防防災研究講演会

消防研究センターの研究成果の発表及び消防関係者、消防防災分野の技術者・研究者等との意見交換のため、平成9年度(1997年度)から「消防防災研究講演会」を毎年度開催している。令和4年度は全国消防技術者会議に合わせて会場開催とし、11月17日に第25回消防防災研究講演会「自然災害に対する危険物施設の事故対策」を開催し、これまでの研究成果、得られた知見及び課題について議論した。 

(4)調査技術会議

消防研究センターでは、消防本部が行った火災及び危険物流出等事故に関する調査事例や、最新の調査技術を互いに発表する「調査技術会議」を開催している。この会議は、調査技術や調査結果の行政反映方策に関する情報を共有して、消防本部の火災調査及び危険物流出等事故調査に関する実務能力を全国的に向上させることを目的としており、会議で発表された調査事例は、年度末に取りまとめて消防本部に配布し、情報共有を図っている。令和4年度は、東京、名古屋、仙台、札幌、大阪及び福岡の6都市で開催し、火災事例発表が36件、危険物流出等事故事例発表が6件行われた。

(5)消防防災科学技術賞

消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に資することを目的として、消防職団員や一般の方による消防防災機器等の開発・改良及び消防防災科学に関する論文並びに消防職員による原因調査事例報告のうち、特に優れたものを消防庁長官が表彰する制度を平成9年度(1997年度)から実施している。
令和4年度は67編の応募があり、選考委員会による選考の結果、27編の受賞作品(優秀賞24編、奨励賞3編)が決定され、11月16日に表彰式を実施するとともに、同日の全国消防技術者会議の中で受賞作品の発表が行われた。

(6)施設見学

消防研究センターの実験施設や研究成果等の見学については、令和4年度は消防大学校入校者を中心に計385人を受け入れた。 

(7)消防防災等に関する研究開発等動画の配信

令和3年度から、一般公開及び全国消防技術者会議において配信した動画の多くについてイベント終了後に、消防研究センターホームページ(ライブラリー)における配信を開始している。令和5年4月には、消防研究センターの研究開発等18動画及び消防機関等の発表動画36動画を配信している。

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