令和6年版 消防白書

1.危険物規制

(1)危険物規制の体系

消防法では、①火災発生の危険性が高い、②火災が発生した場合にその拡大の危険性が高い、③消火が困難であるなどの性状を有する物品を「危険物」として指定し、これらの危険物について、貯蔵・取扱い及び運搬において保安上の規制を行うことにより、火災の防止や、国民の生命、身体及び財産を火災から保護し、又は火災による被害を軽減することとされている。
なお、危険物に関する規制の概要は、次のとおりである。
・指定数量(消防法で指定された、貯蔵又は取扱いを行う場合に許可が必要となる数量)以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならず、危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を法令で定める基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならない。
・危険物の運搬については、その量の多少を問わず、法令で定める安全確保のための基準に従って行わなければならない。
・指定数量未満の危険物の貯蔵及び取扱いなどについては、市町村条例の基準に従って行われなければならない。

(2)危険物取扱者

危険物取扱者は、「甲種」「乙種」「丙種」の3つに区分されており、区分によって取り扱うことができる危険物の種類が異なる。危険物施設での危険物の取扱いは、危険物取扱者が自ら行うか、その他の者が取り扱う場合には、甲種又は乙種危険物取扱者の立ち会いの下行わなければならないとされている。
令和6年3月31日現在、危険物取扱者制度発足以来の危険物取扱者試験の合格者総数(累計)は1,028万4,198人となっており、危険物施設における安全確保に大きな役割を果たしている。

ア 危険物施設数の状況

令和5年度中の危険物取扱者試験は、全国で4,268回(対前年度比17回減)実施された。受験者数は31万5,915人(同5,717人減)、合格者数は12万2,942人(同4,823人減)で平均の合格率は約38.9%(同0.8%減)となっている(第1-2-2図)。
試験の種類別にみると、受験者数では、乙種第4類が最も多く、次いで丙種、甲種となっており、この3種類で全体の約8割を占めている。

イ 保安講習

危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年に1度、都道府県知事等が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習(以下、本節において「保安講習」という。)を受けなければならないこととされている。
令和5年度中の保安講習は、全国で1,541回(対前年度比56回減)実施され、18万1,204人(同8,045人減)が受講している(資料1-2-10)。

第1-2-2図 危険物取扱者試験実施状況

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(3)事業所における保安体制

事業所における保安体制の整備を図るため、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設の所有者等には、危険物保安監督者の選任、危険物施設保安員の選定、予防規程の作成が義務付けられている。また、同一事業所において一定の危険物施設を所有等し、かつ、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものには、自衛消防組織の設置、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている。

(4)保安検査

一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、その規模等に応じた一定の時期ごとに、市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査(保安検査)を受けることが義務付けられている。

(5)立入検査及び措置命令

市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造及び設備並びに危険物の貯蔵又は取扱いが消防法で定められた基準に適合しているかについて立入検査を行うことができる。
立入検査を行った結果、消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに関する遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。

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